<革命の子どもたち>
日本赤軍・重信房子と娘メイ…どう見えていたのか?母親の革命運動とその時代「理解はできる」

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(c) Transmission Films 2011
(c) Transmission Films 2011

   1960年代、米軍の北ベトナム爆撃が開始されると、アメリカをはじめ世界中で大規模な反戦行動が展開された。日本でも市民、学生、労働組合、革新政党などによる広範なベトナム反戦運動が広がった。この映画は反戦運動・学生運動の中から生まれた元日本赤軍・重信房子と元ドイツ赤軍・ウルリケ・マインホフのそれぞれの娘である重信メイとベティーナ・ロールの目を通して、革命を目指した時代を検証するドキュメンタリーだ。

   「革命戦士」を自認した母親に対しての彼女たちの想いや革命思想を、当時のニュース映像やパレスチナ解放闘争に参加した映画監督・足立正生などの証言を交えて、アイルランド人監督、シェーン・オサリバンが紡いでいく。

命狙われる危険から父親の名前知らされず

   重信メイは房子とパレスチナ人男性との間に生まれた。命を狙われる危険から父親の名前を知らされず、長年、日本戸籍がない状態であった。彼女は日本という第二の祖国に初めて降り立たときアイデンティティーが生まれ、故郷パレスチナと母親に対する想いを募らせたと回想し、母親・房子を「理解できた」という。

   ベティーナ・ロールは母親を大きく俯瞰で見ている。家族より革命を選んだ母親に対する想いは、今も深く傷跡として胸に残るが、インタビューで母親を1度も「否定」していないのが印象深い。

   生まれながらの革命家は存在しない。彼女たちの母親も平凡な女性であり、房子は大学の授業料値上げに反対する学生運動が世界革命に身を投じるきっかけとなっていった。マインホフも左派系のジャーナリストで、華奢な体型から武装闘争とは無縁に思われていた。 何が彼女たちを闘争に向かわせたのか。娘たちにもはっきりとは分からない。時代の風が彼女たちの精神に集い、若者が立ち上がり、価値観に変化を与えた――としか言いようがないと映画は語る。このあたりは、革命運動に加わっていく動機を知りたい人には不満が残るかもしれない。

   この映画は揺れていた時代の回顧録ではないと強調するように、現在の新宿の風景が映し出される。重信メイ、ベティーナ・ロールとわれわれは同じ時代を生きており、われわれは60年代、70年代を駆け抜けた革命家の子孫なのだと、映画が語りかける。

   情報化社会=SNS時代はジャスミン革命やエジプト革命が象徴するような新たな革命が、完全ではないにしろ民主化の芽吹きを生んだ。かつて革命を信じ、立ち上がった者たちが浴びた時代の風は、集団的自衛権の法案が閣議決定され、アメリカ流徴兵制度が空想のものでなくなりつつある現在の日本にも吹いている。

丸輪太郎

おススメ度☆☆☆

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