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帰化中国人だから怪しい?いくらなんでも牽強付会!「防衛大女子学生」女スパイ呼ばわり

   中国、韓国に対する批判記事が今週も花盛りである。週刊文春は「韓国は中国の属国だ!」、『週刊新潮』は「ひと皮むけばいがみ合っている『中国・韓国』反日連合の弱点」と、よほど中韓の接近が気に入らないと見える。週刊現代までが巻頭で「ああ、中国・韓国・北朝鮮 おかしな隣人たちよ、君たちは大丈夫か」とやっているが、北朝鮮はともかく、中国や韓国に「大丈夫か」とものをいえる立場に日本があるとは、私には到底思えない。

   先に書いた野々村竜太郎県議の号泣記者会見はYoutubeで世界中に流れ、「おかしいヤツだ」と顰蹙を買っているし、憲法改正もしないで戦争のできる国に変容させてしまった安倍首相も相当おかしいと思う。そういう視点があったら、とてもこんな特集は組めないはずだが。

   そう思っていたら、週刊新潮に防衛大学校の学生に「中国の女スパイ」が入り込んでいるという記事がある。それも参議院決算委員会で和田政宗議員がこの問題を質問したというのだから、相当確度の高い情報なのだろうと読み始めた。

   この女子学生は大学の外に部屋を借り、中国へ無断渡航しているため、自衛隊の機密情報を中国側に流している可能性があるというのだ。公安警察の関係者が、この女子学生は3年生で、3歳の時に中国から両親や兄とともに日本へ来て帰化している人間だと話している。兄も自衛官だそうだが、この程度の個人情報を調べずに防衛大側が彼女を入れたとはとても思えないのだが。

   アパートに優秀な学生や防大の幹部が出入りしている姿が確認されていて、学内に中国シンパを増やそうとしているのではないかと『邪推』しているが、週刊新潮も<いくら防大生とはいえ、自衛隊の機密情報を手に入れることは、ほぼ不可能に近かったと見られている>と書かざるを得ないように、噂程度の情報ではないのか。

   諦めきれない週刊新潮は、この学生が大学を出て順調にキャリアを重ねれば、そうした機密情報を手に入れられる立場になると仮定の話に持っていき、週刊誌お得意の「だとすれば」中国がこの女子学生を防大に送り込んだ目的は何だったのかと、強引すぎる方向へ持っていくのだ。日本語の不自由な彼女の母親が、娘は中国にいる88歳のお祖母ちゃんに会いにいっただけで、日本で頑張っていきたいから帰化したのだから、国会質問されてから心を痛めていると話しているが、心中察するにあまりある。

   週刊新潮が取材すべきは、防衛大学は彼女が中国から日本に帰化したことを本当に知らなかったのかということではないか。それほどルーズであるならば、中国からのスパイなど簡単に入り込むことができ、いまは防衛省の幹部になっている人間もいるかもしれないではないか。これを読む限り、帰化した人間というだけで疑われているとしか思えない。彼女の肩を持つわけではないが、これでは立つ瀬がなかろう。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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