日本で働くイニシアルコスト100~300万円。韓国はその5分の1
韓国や台湾の制度は日本の制度とどこが違うのか。少子高齢化に直面し、東南アジアからの人材確保に活路を見出そうとしている点は同じである。根本的に違うのは、日本は技能実習生、つまり見習い労働者として受け入れる形をとり、仲介業者が間に入っているのに対し、韓国、台湾とも『労働者』として真正面から受け入れ政府が管理している点だ。
たとえば、韓国は政府が一括して人材を確保するので、高額の仲介手数料を払う必要がなく最低限の手数料で済む。労働滞在期間も日本が3年(来年から5年)なのに対し、韓国は最長9年8か月、台湾は12年と長く、それだけ労働者の収入が増えることになる。
首都大学東京の丹野清人教授はこう解説する。「台湾も韓国も労働者として受け入れるから、韓国などは2国間協定を結び国が前面に出てやっています。日本は労働者になる前の技能実習生として受け入れている点で弱さがありますね。
日本は相手国の仲介業者が人材を集め、日本側の仲介業者に渡す。そうすると透明さに欠けるうえ、イニシアルコストがかかるので、その穴を労働者に払ってもらう必要があり、費用がかかります。日本の魅力は下がらざるをないですね」
国谷裕子キャスター「日本に行く場合と韓国に行く場合とで、初期費用はどのくらい違うのですか」
丹野教授「日本の場合は100~300万円という金額を聞くことがあります。3年でそれを払わなければならないので、残業をやる、土日も削るように働かなければならない。それに比べ、韓国のイニシアルコストは3分の1~5分の1。長く働けるので魅力が全く違います。
原点に戻って、外国人労働者を受けれるんだということを真剣に考えることができるかどうか。そこを見詰め直す必要があります」
外国人労働者にとってイニシアルコストがかかる仲介業者の問題は、国内でいえば派遣会社と似ている。公共職業安定所(ハローワーク)の機能を拡充すれば済ものを、間に仲介業者である派遣会社が入ったばっかりに、その分、派遣社員の収入が減る。ことほど左様に、政府はこれまで上っ面の仕組みづくりにばかり注力してきた。さて、原点に戻って労働者の視点で考えることができるのかどうか。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2014年7月9日放送「アジア労働者争奪戦」)