ミステリー期待は肩透かし―オープニングでネタばれがっかり
原作にとらわれることなく奔放に描き切った姿勢に好感を受けるが、物語の肝である加奈子の「本当の姿」に驚きがまったくなかった。この映画で大事なのは、藤島が加奈子を探していくうちに見えてくる、父親でさえ知らなかった彼女の姿の意外性のはず。原作はその「本当の姿」を求めて加速していく。しかし、映画はパーティーではしゃいでいる加奈子の姿をオープニングで入れるなど、その点にまったく訴求力がない。
他にも、加奈子の真の狙い、黒幕の正体などは明らかに描写不足である。ミステリー映画として見てしまうと肩すかしを食らうので、おススメしない。だが、暴力・殺人描写は良い意味で「問題作」と呼べるくらい過激である。それでいて、R-18ではなく15にとどめたのは評価できるし、何よりも住宅物件のCMに出演している役所広司主演でこの企画が通ったのは素晴らしい。
(野崎芳史)
おススメ度☆☆