政府はきょう4日(2014年7月)、北朝鮮への独自の制裁の一部を解除する。先の政府間協議で北朝鮮が示した拉致被害者調査の態勢が、有効に機能すると判断した結果で、拉致被害者の帰国につなげたい考えだ。最初の調査結果が出るのは8月末ころとみられている。
安倍首相が迎えに行く?8月の外交日程キャンセル
制裁が解除されるのは、(1)人の往来(2)人道支援目的の船舶の入港(3)送金・携帯金額などの規制だ。これにより朝鮮総連幹部が訪朝しても再入国できるようになる。船舶では万景峰号の日本入港は除外された。06年の北朝鮮のミサイル発射に対する制裁で、入港禁止のままは北朝鮮にとっては手痛い。再開を求めているが、日本側はこれを切り札として残した形だ。
昨夜(3日)のNHKの「クローズアップ現代」に出演した菅義偉官房長官は、「ようやく扉を開けることができた。拉致問題は安倍政権で解決する」と述べ、今後の見通しとして「期限は1年以内」「最初の調査結果が出る夏の終わりから秋の初めが第一歩」「日本から調査団が行くのがひとつのヤマ」と語った。
安倍首相には言及しなかったが、首相は8月に予定していた外交日程をわざわざ外しており、菅官房長官の見通しと重ね合わせると、首相が北朝鮮訪問に備えている可能性は高い。
政府間協議の北朝鮮側代表のソン・イルホ大使は「菅官房長官は1年以内といっている。それに応えたい」と話した。合意では、拉致生存者は発見次第すべて帰国させることになっている。
「ミサイル発射」「核実験」で吹っ飛ぶ心配
8月下旬から9月という時期について、コリアレポートの辺真一・編集長は「小泉さんのときも、政府間協議から帰国まで1か月半かかっています。それと合致しますね。ただ、この時期は米韓合同訓練があり、北朝鮮が反発してミサイル発射とか核実験となると吹っ飛んでしまう」と心配する。
ただ、調査委のトップに国家安全保衛部(秘密警察)のナンバー2がついたことで、空振りに終わった前回の06年とは違うという。前回はトップが人民保安部(警察)で、党の中枢とのつながりが弱かった。「今回は拉致認定の12人全員はともかく、何人かの消息は最初の報告で出てくる」と辺氏はみる。
一部には、政府間協議で被害者の名前が、それも2ケタ提示されたという報道も流れている。ホントかもしれないと思いたくなる心情が働くのも事実だ。期待はそれだけ高い。
TBSの牧嶋博子・解説委員「これまで北朝鮮には何度も煮え湯を飲まされてきて、政府の外交手腕が問われています。解決してほしいけど、あまり妥協をしてもと、ホントに難しいと思います」