安倍内閣は1日(2014年7月)の臨時閣議で、集団的自衛権を使えるように憲法解釈の変更を決定した。同盟国のアメリカ軍が日本の周辺で戦っているのに助けないのはおかしいから始まった安倍の集団的自衛権の行使容認だが、一番気になるのは、湾岸戦争やアフガン戦争での多国籍軍として戦闘に参加してこなかった自衛隊が、最前線の戦闘に参加する可能性が出てくるのではないかという点だ。
これについて、安倍は会見で「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません」「海外派兵は一般に許されないという従来の原則も全く変わりません」と明言した。
ならば、首相が「歯止め」とする武力行使の新3要件に、具体的に「多国籍軍には参加しない」「海外派兵はしない」と明記すべきだが、新3要件は「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合…実力行使する」と抽象的文言にとどまっており、閣議決定の内容とは相当のズレを感じる。
アメリカの同盟国・イギリスの役割を日本がアジアで担う。そんなアメリカの意を受けた首相の狙いが見え隠れする。
「来年4月の統一地方選で争点化困る」公明党に配慮
司会の小倉智昭「イギリスとアメリカは同盟国で、アメリカに何かあった場合、イギリスはたいてい参戦していますよね。もしアメリカから要請があった場合は戦争に参加する可能性が出てこないんですかね」
田崎史郎(時事通信解説委員)「その可能性があるという人もいるが、安倍首相が言われるように『決してありません』というのと、新3要件で『明白な危険がある場合』と制限を付け、歯止めがかかっているというのが政府見解です。ただし、この歯止めでは足りないという人も大勢いますよね」
小倉「(日本国憲法ができた)当時と今では、世界のパワーバランスが変わってきたという危機感もありますが…」
田﨑「なぜ、(安倍政権は)急ぐのかとよく聞かれます。政府は12月(2014年)に日米ガイドラインで防衛協力のための指針を変えるので、それに間に合わせたいといいうことだが、本当は中国の脅威がかなり大きくなってきているということでしょうかね。軍事力を増強し空母まで持っていますから。
米国からの非公式な情報で、中国は相当なミサイルを持ち、日本に向けている、ステルス戦闘機の開発も進んでいるという。コトが起きてからでは遅いので今やっておこうというのが首相の判断ですね」
小倉「今後の国会のスケジュールはどうなっているんですか」
「今月14、15の両日の衆院予算委員会で、この閣議決定に対する閉会中審議を行うことになっています。集団的自衛権の行使に関する関連法案については、来年4月の統一地方選挙後に提出する考えです。公明党が重視する選挙でこれが争点にならないように配慮したということです」