世界的なベストセラー「アルジャーノンに花束を」の作家ダニエル・キイス氏が15日(2014年6月)、フロリダ州の自宅で亡くなった。86歳だった。米ニューヨーク市生まれ。雑誌編集者、教師などを経て、1959年に発表した「アルジャーノン~」で一躍注目された。他に「五番目のサリー」「24人のビリー・ミリガ ン」などの作品がある。
幼児の知能のパン屋店員…IQ68が185になって変わっていく周囲
知能の発達が遅い青年が脳手術で驚異的な知能を得るという「アルジャーノン」の設定は、当時はSFに分類されたほど斬新だった。超常現象ですら普通に登場する現代小説からすると55ウソのようだが、構成は入念だった。
パン屋の店員、32歳のチャーリイ・ゴードンの知能は6歳児以下。温和で陽気でからかわれてもめげず、みんなに愛されていた。物語はチャーリイが書いた経過報告日誌として語られる。アルジャーノンは実験で知能が高くなったハツカネズミの名前だ。
チャーリイは脳手術をうけてから、68だったIQが185にまで伸びる。舌足らずだった文章が知的になり、哲学から自然科学の分野にまで視野が広がって、さらに周囲が変化していく過程が入念に描かれる。しかし、手術は失敗に終わる。知能が戻っていくことを知ったチャーリイは、最後に大学教授に宛てて「うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやてください」と記す。胸を打つ終章だった。
文
ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト