人民と富裕層の埋めようのない格差社会
人民と富裕層の埋めようのない圧倒的な差は中国の実像であり、人間の敗北であり、そのような社会で生きる人間は動物化していく。物事を短絡的に捉え、痛みは失われ、想像力を失い、最も分かりやすい「暴力」――他殺も自殺もひっくるめた――により、人間として生まれたことへの決着を図る。
ただ、暴力では何も変わらず、虚しさだけが残ることは歴史が証明している。その想像力を失った国家は、上映を無期延期にしているらしい。登場人物たちは決起した対象が何なのか。何によって抑圧され、何によって暴力が引き起こされるのか。出稼ぎに行くと妻に嘘をつき、強盗を犯すワン・バオチャンの目が物語る。怨むべき対象のことを重々承知してるが、どうにもならないことも承知してしまい、対称に理由を失っても衝動だけが止まぬ無差別の暴力だけが残る。このときの目が見どころか。
丸輪太郎
おススメ度☆☆☆☆