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「がん克服本」あざとい商売!治ったと宣伝してサプリメント・健康食品販売

   がんといえば、書店に行けばがん克服本が山と並んでいる。どれもこうすればがんは治る、私はこれでがんを克服したと大声でが鳴っている。こうした本の多くは、がん患者や身内にがんの人間がいる人たちの藁をもすがる気持ちにつけ込むあくどい商法ではないかと、常々思っているのだが、週刊新潮ががん克服本には嘘が多いという特集をやっている。

   最近話題になっているがん克服本では『食べ物だけで余命3か月のガンが消えた』(高遠智子 幻冬舎)という本があるそうだ。高遠氏は28歳で原発卵巣ガン(スキルス性)が見つかり、3年後には肺への転移が見つかり、余命3か月と宣告された。

   彼女は医師に別れを告げ、車いすで単身渡仏。パリの市場で勧められたトマトをかじったことで食の重要性を知り、現地の料理学校へ通う。激痛はあったが4年で料理学校を卒業し、中国へ行って薬膳を学ぶ。そうして今では年に1度受ける健康診断ではまったく異常なしだそうだ。

   週刊新潮がかみついているのは、ガン治療に割かれているページが213ページ中わずか34ページしかないことだ。あとは氏が推奨するオーガニック薬膳などのレシピ。また、なぜがんが消えたのかについてまったく記されていないことにも疑問を呈している。さらに、基本的な間違いがあると日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之氏が話す。

<「スキルス性の卵巣がんというのはありえません。スキルス性は胃ガンや乳がんにみられる組織型で、肺がんにもありません」>

   週刊新潮は<本の内容が事実とすれば、100万人に1人の奇跡であり、広くがん患者の参考になる本ではないことになる。また、誤診の可能性も否めない>のではないかと、出版元の幻冬舎に話を聞きたいと申し入れたが、「担当者が不在」でダメだったそうである。

   このような食事でがんを克服という本は多く出ているそうで、西台クリニック院長の済陽高穂氏の『今あるガンが消えていく食事 余命宣告からの生還』(マキノ出版)もそのひとつで売れているそうだ。だが、東大医科学研究所の上昌広特任教授は「これを食べればがんに有効だというデータはありません。養生訓としては正しいと思います。副作用もありませんしね。ただ、それでがんが治ることはありえない」とにべもない。

   なかには、手術も抗がん剤も放射線治療も「百害あって一利なし」と近藤誠医師より極端なことをいっている本『がんが消えた!――マイナス水素イオンの奇跡』(及川胤昭・理学博士、鶴見隆史・鶴見クリニック院長 幻冬舎)は、がんの主な原因を活性酵素と考え、それを徹底的に除去することが根本治療であるとしているそうだ。

   東大病院放射線科・中川恵一准教授によれば、活性酵素ががんと関係あるのは事実だが、「1度がんになってしまえば、活性酵素も何もありません。発生したがんについて、活性酵素の除去は全く効果がありません」とこちらもばっさり切り捨てている。

   しかも、この本を書いた著者は、沖縄のサンゴの微粉末を利用してマイナス水素イオン水のサプリメントを開発、製造しているというのである。何のことはない、本がサプリを売るための宣伝媒体になっているのではないか。

   これに似たケースはこれまでもあった。もっとひどい話がある。だいぶ昔になるが、某出版社はそこで出している健康雑誌で「がんが治る○○」「血糖値がすぐ低下する○○」と大々的に謳い、子会社でそれらの健康食品を売る薬局を作り販売していたのだ。さすがに薬事法違反か何かで手入れがあり潰れた。

   だが、こうした本作りが今なお続けられ、大新聞に堂々とその手の本の広告が載っている。ここに紹介した本がそうだというのではない。だが、出版倫理などといわないまでも、がん患者の弱みにつけ込んで売らんかなの本作りをする編集者にはなりたくないものである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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