鳥取の砂丘といえば、植田正治の写真だ。見渡す限りの砂丘と海と空……。のはずが、なんと砂丘のど真ん中でトノサマガエルが生息していた。通称オアシスという水たまりがあるのだが、夏には干上がってしまう。それでも、なぜか毎年現れる。ちょっとしたミステリーだ。
卵も産んで泳ぎ回るオタマジャクシ
見かけるようになったのは10年ほど前からだという。オアシスは砂丘の地下にある火山灰層が露出した凹みに雨水などかたまってできると考えられている。普通は秋から春にかけて出現するが、8月ころには水量が減って、年によっては完全に消えてしまう。
いまの時期は水もたっぷりで、ヨシのような水草も生えるなか、カエルは気持ち良さそうに泳いでいる。卵も産み、オタマジャクシも見かけるのだが、それがカエルになったところを見た人はいない。
そこでさまざまに推測する。鳥がエサとしてくわえていたカエルを落としていった。地下水路があるのか。砂丘の外から歩いて来るには300メートルもの大冒険になる。専門家は「トノサマガエルはあまり移動しません。生まれたところで育って繁殖するから、大雨ででも流されてきたか」という。
砂丘では干からびてミイラになったカエルが毎年のように見つかってはいる。鳥取砂丘レンジャーは「ど根性ガエル」と呼んでいる。「根性がなきゃ生きていけないからね」と笑う。
文
ヤンヤン