日本人拉致被害者解決の糸口が見えてきたのか…。安倍首相は29日(2014年5月)夜、拉致被害者を再調査することで北朝鮮と合意したと発表した。北朝鮮が特別調査委員会を立ち上げ調査を開始し、日本政府も調査委員会立ち上げのタイミングで北朝鮮に課してきた制裁措置を解除するという。
ただ、調査の内容がすべて真実で信用に足るものかどうかの保証はなく、判断は極めて難しい。結果も見ずに制裁解除は早過ぎるのではないかという声も出ている。
調査は向こう任せ…どこまで信用できるか
合意した内容は、日本政府が入らない北朝鮮独自の特別調査委員会を3週間後をメドに立ち上げ、調査状況を随時日本側に報告するというものだ。生存者が発見されれば帰国させるという文言も盛り込まれたという。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は首をかしげる。「基本的に、拉致問題は北朝鮮の国家の関与が濃厚の中で事態を把握しているはずなんですよ。それを何度も調査するしないと言ってきた。もし制裁解除となると、米韓は核問題を重要視していますから、日本だけが突出してしまう。日米関係にマイナスな影響が出てくる可能性があり、制裁解除に関しては慎重にやらないといけない気がするんですがね」
欧米はウクライナ情勢が緊迫する中でロシアへの接近を続ける安倍政権への懸念もあり、核開発をやめない北朝鮮への制裁解除には外交上のリスクもある。
北朝鮮は中国とギクシャクで経済逼迫
「コリアレポート」の辺真一編集長は「心配には及ばない。むしろ安倍外交の快挙」という。「アメリカは日本の拉致問題が解決しないのに、アメリカの国益のため、北朝鮮の核ミサイルを断念させるためにテロ支援国規制を解除したし、さらに2013年には北朝鮮に24万トンの食糧援助を約束しています。韓国も同様に南北関係改善のために日本人拉致問題よりも国益を優先させて食糧支援をやった。
安倍さんはこの問題は他国には頼れないと考えて合意したのでしょう。北朝鮮にとっては、いま日本が経済的に緩和してくれれば一息つけます。
そればかりではありません。いま中国は北朝鮮の頭越しに韓国に急接近し、蜜月関係になっています。朴槿恵大統領を呼び、今度は習近平主席が訪韓する。金正恩政権は相当苦々しく思っているはずです。北朝鮮の対中、対韓のぎくしゃくした関係と日本のぎくしゃくした関係とまったく同じ状況にあるんです。私は安倍さんがこういう決断をしたのは日本外交の快挙ではないかと高く評しています」
しかし、それも騙されなかった、信頼できたという結果があってのこと。司会の羽鳥慎一は「誰もが制裁解除は早過ぎると思っているでしょうからね」という。作家の吉永みち子も「この約束がいかに当てにならないかということもわかっていますからね」
安倍外交にとって今回の合意を契機に正念場を迎えることは間違いない。