数少ない雄が狙われ繁殖にも支障
スタジオには滝田さんがゲストとして出演した。国谷が「なぜ密猟が頻繁に行われるようになったのでしょうか」と聞く。「1989年のワシントン条約で象牙の国際取引は禁止され乱獲に歯止めがかかりました。ところが、9年後に事態は一変しました。死んだゾウの象牙を市場に出すことは輸出国にも消費国にも利益になるということで2回ほど制限つきで合法取り引きされたのですが、これで現地では象牙をまた売れるものだという勘違いが起きました」
国谷「このような事態が続けば、何が起きるでしょうか」
滝田「まず密猟で狙われるのは象牙。この象牙が大きい雄の個体が狙われます。そうすると、雌の群れに遭遇する割合が非常に低くなるんです。ただでさえ数少ない雄ですから、それがだんだん密猟で命を失っていくと、群れの繁殖自体にも問題が出てきます。また、雌の群れは年がいっている雌が群れ全体の知恵袋です。年取った彼女たちがいなくなることによって、今度は若い雌のゾウたちが未熟な経験で群れを導きます。その結果、畑に入ってしまうとか、乾季のときに水場にありつけないとか、いろいろな問題が出てきて、人間との衝突も起きているのが現状です」
象を守るための取り組みは行われているのか。滝田さんはこう話す。「その一つのプロジェクトとして今度、森から取れる蜂蜜をスタートしようとしています。象は蜂が嫌いで蜂箱が置いてある所には近寄りません。住民は蜂蜜によって現金収入が得られ、森が守られ、そしてゾウも森の中で生息できるという循環を作り出そうとしています」
国谷「一方で、先進国、象牙を消費している先進国に対しては、どういうことを求められますか」
滝田「まず最初に情報が入ってこない。アフリカのゾウの象牙がどのようなアフリカ人の生活と安全に対して影響しているのかという情報が入ってこないのが問題です。それをまず知ったうえで、象牙の消費国としてこれから象牙にどうやって関わっていくかということを考えていくことが必要だと思います」
象牙の印鑑などの製造・販売を違法にするということはできないのだろうか。
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2014年5月26日放送「追跡 アフリカゾウ密猟とテロ」)