韓国の旅客船「セウォル号」の沈没から間もなく1か月だが、14日(2014年5月)にもあらたに5人の遺体が発見され、これで確認された遺体は281人となり、残る23人の行方がまだ分かっていない。
そうしたなかで、修学旅行中の高校生たちが所持していた携帯電話に残された最後のメッセージが新たに公開された。「待機するよう」にという船内放送の指示を守りながらも死への不安が募る高校生たちの切羽詰まった思いが生々しく伝わる内容だった。
犠牲の高校生たちケータイやり取り「乗務員だけ逃げたんじゃない」「地下鉄事故もそうだったじゃん」
「安心だからじっとしていろって」「じっとしていたら死んじゃったってやつ?」「もう死んじゃうんじゃないの。こんなに傾いているじゃない」
そこへ船内放送で「船内のいまいる場所から動かず、棒や物をつかんで待機してください」という指示が流れる。
「ばっかじゃない」「そうこう言って、あいつら(乗務員)だけ逃げたんじゃない」「(過去に事故を起こした)地下鉄もそうだったじゃん」「逃げた人は助かったってさ」
さらにこんなケースもあった。遺体となって発見され男子生徒の携帯電話を復元したところ、沈没直前に母に25回も電話をかけていた。通話状態が悪かったのだろう、つながったのは数回だけだった。最後につながったのは16日午前10時14分だが、母親によると勝手に切れてしまい話はできなかったという。
そして死への不安はその直後に現実となってしまった。高校生たちの会話を聞いた遺族たちは絶句し、高校生ら乗客を置き去りにし真っ先に逃げた船長ら乗組員への怒りを抑えきれなかったろう。
宮田佳代子(元テレビ朝日キャスター)「強がったりしたシーンもありましたけど、本当に指示に従っていていいのかなっていう半信半疑の様子がよく伝わってきますよね」
タレントの松尾貴史は「半信半疑というより、確信的にひょっとして死ぬんじゃないのと気が付いていたのではないか」という。
「ケガで動けない調理担当残してきた」脱出の乗組員告白
置き去りにされたのは乗客だけでなかった。脱出した乗組員2人は、ケガをして動けない調理担当の乗組員2人がいるのを確認していながらそのままにして逃げたと供述したという。捜査本部は船長、機関長、1等航海士、2等航海士の4人を「不作為の殺人罪」で起訴する。やるべき責任と義務を果たさず見殺しにしたのは、殺人に相当するという判断だ。
テレビ朝日ソウル支局の大野公二記者「取材した検察庁幹部は、立証の難しい『不作為の殺人罪』を適用するかどうかかなり悩んでいたようだった」
遺族感情を考えれば「不作為の殺人罪」で起訴したいところだが、裁判で立証できずに無罪になった場合、検察の汚点は取り返しがつかないと悩んでいたという。