縮む日本「極点社会」高齢者もいなくなる地方、東京流入の若い女性は非婚・非出産…止まらない人口減少

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   郷里の墓からお骨を都会に移す人がいた。墓を守る人がいなくなったのだという。あたりの墓石もツタがからんでいた。少子高齢化で高齢者は増えていると思っていたが、違った。NHKが住民基本台帳をもとに全国1742の市区町村の5年間の人口の増減を調べたところ、22%の388の市町村で高齢者が減っていた。

最悪・新宿区の危機「女性未婚率53.8%、出生率0.96」

   高齢者減が多かった徳島県の西のはずれにある三好市は人口3万人で、高齢者率38%は全国平均を大きく上回る。いま、空き家率が22%で、JAの個人預金は5年間で12億円も減った。かつては常に満床だった介護施設に空きができて埋まらない。高齢者の購買力が支えていた市の経済は崩壊寸前だ。黒川征一市長は「限界集落ではなくて、消滅集落、崩壊集落です」という。

   徳島を拠点にする社会福祉法人「健祥会」の中村太一理事長は東京23区への進出を目指して自治体行脚の日々だ。世田谷区の担当者は「2200人も待機者がいる。ぜひ進出を」と期待する。「都会進出は将来的に得策」と理事長は話す。

   地方の介護・医療法人が都内に持つ施設は、10年前は3か所だったが、いま35施設になり、建設中のものも多い。なかには、介護の人手も地元から連れてくるところもある。鳥取の介護施設は短大や専門学校を回ってリクルートする。「東京勤務もありますよ」

   元総務相の増田寛也・野村総研顧問ら専門家チームが、20代、30代女性の人口移動の将来予測を出した。結果は、2040年に若年女性が半分以下になる自治体は896(49.8%)と出た。高齢者の年金などで支えられてきた地方経済が縮小するため、若い女性の雇用がなくなってしまうからだ。

   これを東京の側から見ると、20代30代の女性は1980年以来、出の方が多かったのが、2000年からは入ってくる方が多くなってだんだん増えている。都道府県別の就業者数の増減を見ると、介護・医療という地方雇用の拠り所を東京が吸い上げていることがわかる。

   しかし、東京は若い女性にとって、日本一結婚し難い、暮らし難いところで、家賃は全国平均より2万円も高い。保育所の待機児童は1万人を超える。女性の未婚率は42%と日本一で、出生率が1.09と飛び抜けて低い。「最悪」の新宿区(未婚率53.8%、出生率0.96)は昨年(2013年)から、未婚女性の聞き取り調査を始めた。結婚しない理由のトップは「めぐり合いがない」「仕事に打ち込みたい」「収入の不安」だった。いまは人口は20代30代が一番多いが、このまま年月が経てば区全体が縮小する。中山弘子区長は「これは新宿だけの問題じゃない」という。地方では高齢者経済が成り立たなくなり、都会では女性の非婚で少子化が進む。日本全体が縮小の危機、地方は消滅の危機に直面しているのである。

年金で支えられてきた地方経済崩壊、若者に雇用なし

   日本の人口は2008年がピークで、2040年までに2000万人減る。増田顧問は「それが地方でどう現れるかが問題なんです。これは東京からでは見え難い。高齢者減を上回って若年者も減り始めているんです。自治体は1万人を切ると、コミュニティーとして機能しなります。一方で都会では過度の集中が起る」という。行きつくところは「極点社会」というアンバランスだ。

   増田顧問「若年女性の流出・流入を政策的に止めないといけないんです。どうしたら地方でいい生活ができるかを、若い人の声を聞いて突き止めないと。それも1日でも早く。5年遅れると300万人減ります」

   危機感はわかる。シミュレーションも説得力があった。しかし人の流れを押しとどめることなんてできまい。東京オリンピックで首都圏への過密と集中はさらに進むが、「五輪イケイケドンドン」の政府にこの危機感は理解できまい。

*NHKクローズアップ現代(2014年5月1日放送「極点社会~新たな人口減少クライシス~」)

文   ヤンヤン
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