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人間ドッグ基準値緩和「高血圧患者は作られてきた。自覚症状なければ検診受けるな」(近藤誠医師)

   前に書いたように、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会(健保連)が立ち上げた共同研究事業で、約150万人に及ぶ人間ドック検診受診者の血液検査データを使って導き出した「新基準」が話題を呼んでいる。なかでも、高血圧は従来が上は130以上だったのが147以上と大幅に『緩和』されたのだ。つまり、本来健康の人が誤った基準によって長らく病人と判定されてきたことになる。そのため凄まじい反響があったという。

   そこで週刊文春は長年「医療の常識を疑え」と患者に対する啓蒙を続けている医師の近藤誠氏(近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来主宰)に、こういわせている。<「これまで、高血圧患者は実際よりはるかに多く『作られて』来ました。例えば二〇〇〇年以前の高血圧の基準値では、『上(収縮期血圧)は一六〇以上、下(拡張期血圧)は九五以上』だったのに、日本高血圧学会はこの基準値を『上は一三〇以上、下は八五以上』に引き下げた。これにより、二〇〇〇年以降は『上が一三〇以上で一六〇未満』の人たちが高血圧患者にされ、新たに薬を飲むことになったのです。

   もちろん、上の血圧が二〇〇に近いような人は血圧の低い人に比べれば確かに様々なリスクが高い。心筋梗塞や脳卒中、脳神経障害などを発症しやすいと言えます。頭痛やめまい、意識障害などの自覚症状がある場合は、速やかに治療を開始するべきでしょう。

   ただ、自覚症状もないのに『高血圧なので治療しましょう』と言われて薬を飲まされる人があまりにも多い。しかし、血圧を薬で一三〇まで下げるとむしろ、脳卒中などのリスクが高まるんです」>

   近藤氏の主張が今回の新基準で裏付けられたのではあるが、近藤氏は「本来こんな基準範囲など意識する必要はない」として、むだな高血圧治療を受けずに済むために知っておくべきことを5つ上げている。

(1)高血圧のほうが長生きできることを知る。

「血圧の高い高齢者の方が低血圧の人より体が強く、元気なんです。寿命も長くなるはずです」(近藤氏)

   実際、高血圧=長生きを示すデータもあるという。

(2)副作用の怖さを知っておく
(3)血圧を下げても病気発症リスクは変わらない
(4)「上が百四十七までOK」も疑え
(5)検診に行かないこと

   そして近藤氏はこう指摘する。<「患者や家族自身も、もっと勉強して賢くなる必要があるのかも知れません。ドクターが何を操作し、どんな指標を意図的に使い、何を『語らないのか』を知ることです。そして自覚症状がない人はあらゆる検査や人間ドックを受けないこと。これまでの基準はもちろん、新基準範囲も自分で疑って欲しい。正しい知識は受け身では得られないはずです」>

   私も血糖値が高いが、こんどの新基準で安心して食べたり飲んだりすると……ああ怖~ッ。健康こそ自己責任である。わかっちゃいるんだがねえ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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