小保方晴子の呪い…iPS山中教授に飛び火した「データ捏造疑惑」実験ノートも不備

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   『週刊新潮』は「これは小保方晴子博士の呪いなのか」と問いかけている。小保方博士の不正を認定した理化学研究所の調査委員会の石井俊輔委員長が、自らの論文で「画像データの切り貼りが露見」して委員長を辞任したが、今度はiPS細胞の開発でノーベル医学生理学賞を受賞し、金字塔を打ち立てた京都大学の山中伸弥教授(51)の論文にまで「データ捏造疑惑」が浮上したのである。

   週刊新潮によれば、疑義が生じている論文とは、山中教授が奈良先端科学技術大学院大学の助教授時代の2000年に、ドイツにある欧州分子生物学機構の学術誌『THE EMBOJOURNAL』に掲載されたものだ。ES細胞の分化の過程で、生物の発生の初期段階に必要とされる『NATI』という遺伝子がどのように働き、影響を及ぼすかを調べた実験の成果をまとめた論文だという。

   iPS細胞に関するものではないが、山中教授は「ES細胞の研究を始めるきっかけになった、思い出の深い論文」と話しており、その後のiPS細胞の研究にもつながっていく重要なものだったそうである。

<この論文をめぐり、一部研究者などの間で疑惑が指摘されていたのは2点。1つ目は、実験で使うES細胞の遺伝子を解析した電気泳動の画像について、隣り合う2つのバンドの画像の類似性が極めて高いという点だ。
   2つ目は、各実験で得られた数値を統計処理して平均値を棒グラフ化する際に、示さなければいけない標準偏差(誤差)を表す「エラーバー」についての疑義。普通なら実験によって明白な差が生じるのに、不自然なほど長さがほぼ均一になっているという点である>(週刊新潮)

   私はこうした分野についての知識がまったくないので、これ以上は触れない。細胞生物学に詳しい医学博士の丸山篤史氏は<「真偽をはっきりさせるには、元のデータを開示して、説明するしかない」>という。小保方博士と同列の問題ではなく、山中教授が生データを示せば済むことだというのが専門家たちの意見だった。むろん山中教授は生データをしっかり管理しているはずとの前提だったのだが……。

   こうした疑問について、週刊新潮が確かめるべく、4月28日(2014年)にメールやFAXで山中教授を直撃した。そうしたところ、即日、山中教授が緊急記者会見を行ったのだ。そこでは研究不正は全否定したが、驚くなかれ、疑惑を持たれた当の画像や生データが実験ノートなどに記録されていなかったというのだ。これでは、小保方博士同様、厳密には反証できないことになるではないかと週刊新潮は追及する。

   しかも、4月4日、医療研究の関連法案を審議する国会に参考人として山中教授が出席し、こう答弁しているのである。<「実験ノートの記録は研究不正を防ぐいい方法です。ノートを出さない人は、『不正をしているとみなす』と明言しています。書いていても、ちょっとしか書いていない人や、汚い人は、指導している」>

   そこで週刊新潮は山中教授に単独インタビューした。

<――実験データが一つもないとなると、実験自体が行われていないと思われても仕方がないのではないか。
   「そう言われても仕方がない。性悪説に立脚すれば、そうなるが、そんなことをやる動機や必要がない」
――しかし、研究者の姿勢としては問題では?
   「問題があるのは、間違いありません。科学誌のエディターの判断もあるが、これがないと根本的に論文が成り立たないと認定されるなら、それこそ撤回もあり得るかもしれない」
   (中略)今や再生医療で世界のトップを走る山中教授ですら、過去に杜撰なデータ管理を行っていたのである。生命科学の世界では、ある程度、似たようなことが常態化しているのではないかと疑いたくもなろう>

   近畿大学医学部病理学教室の榎木英介氏もこう指摘する。<「生データがない点で、小保方さんと山中先生の騒動は地続きの問題だと思います。これを機に膿を出し切る必要があるのではないでしょうか」>

   小保方騒動の余波はまだ続きそうである。

立花隆が語る「STAP細胞」なかったという結論早い。彼女にこのままやらせてあげたらいい

   そのSTAP細胞について、『週刊文春』で立花隆氏がサイエンス・ジャーナリストの緑慎也氏と対談をしている。立花氏の発言を少し紹介しよう。

<立花 SRTAP細胞も現時点で再現できていないことをもって、「なかった」と結論づけるのは早い。それにコツがあるならすぐに出せという意見もありますが、これもおかしい。研究者の世界では、問われたことに正直に答える、包み隠さずに何でも教えるのが表面上のルールです。しかし、これは表向きであって、画期的な研究成果、特に莫大な経済的利益が見込める成果の場合、その研究者はライバルに対するリードを保って独走態勢を維持するために、実験技術の肝心の部分を小出しにすることがよくある。(中略)
立花 今、発生生物学や細胞の初期化研究に大変革が起きつつあります。受精卵が分裂を繰り返して胎児になり、赤ちゃんになる発生の過程はまだまだわかっていないことだらけです。山中さんらによって四つの遺伝子を細胞に入れて初期化する方法が見つけられて以降、導入する遺伝子の数を減らして、あるいは遺伝子は入れず化合物だけで初期化する方法も見つかっています。
   それにもかかわらずいまだにどうして初期化するのか肝心なところがぜんぜんわかっていない。STAP細胞論文事件は、ポストiPS細胞めぐって最先端の研究者たちが新たな道を模索している最中に起きた象徴的な事件と言えるでしょうね」
   STAP細胞はまだ「仮説」でしかない。それを検証していくのは根気と長い時間がかかる。その研究に一生をかけたいというのだから、小保方晴子さんにやらせてあげてもいいのではないか。私は今そんな気になっている。>

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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