前世紀の遺物というイメージが強いカセットテープが息を吹き返しつつあるという。神奈川県の新舞踊稽古ではラジカセが使われていて、練習曲が録音されているのはカセットテープだ。同じ曲はCDでも販売されているが、習いに来ている弟子たちがカセットテープを持ち寄り練習に使っている。
師匠の小久保俊江さんは「再生と巻き戻しのボタンがあれば簡単に操作できます。最近の音響機器はいろいろな機能が付いていて覚えきれないんです」と話す。
家電量販店「ひと月に10本パックが40~50個は売れます」
実際にカセットテープはどのぐらい売れているのか。販売店をのぞいてみると、70代男性は「この店に来るたびに10本単位で買って行きます」と話す。東京・大田区の「ダイシン百貨店」塩澤紀行マネージャーは「10本パックがよく売れています。月に40から50パックは売れています」という。「タワーレコード」渋谷店の須藤朋寿氏は「カセットテープはCDと違い、次の曲を飛ばすことができないので、その曲や歌手に愛着を持っているお客さんが購入されていきます」
ラジカセも売れていて、家電販売店「クマザキエイム」の平野篤氏は「買われるお客さまの年齢層は幅広く、若者から高齢者の方までいますよ」と話す。家電蒐集家の松崎順一氏は「カセットテープは音質は悪いが、当時の音や時代を再現できるのが魅力」という。
ブルーレイディスク170枚分
カセットテープのベースである磁気テープの需要も伸びている。司会の夏目三久「これ1つでどのくらいの記憶容量があると思いますか」
キャスターの齋藤孝「ビデオディスクで10枚くらいかな」
夏目「ブルーレイディスクで170枚分の記憶容量があります。アメリカのNASAやグーグルでもこの磁気テープは使われています」
東京大・馬場章教授は「格納できるデータ容量が格段に増え、消費電力が少ないことがメリットですね」と解説する。市場原理で消滅したと思われていたカセットテープだが、どっこい生きていた。