沈没したセウォル号の運航会社オーナーとされるユ・ビョンオン前会長(73)の新たな実像が浮かび上がってきた。カルト教団の実質的な教祖で、過去に32人の信者が集団自殺する事件に関与した疑いがもたれたこともあった。
「キリスト教福音浸礼会」という宗教団体で、オカルト宗教に詳しい紀藤弁護士によると、強引な勧誘、家族破壊、高額な献金で韓国内で以前から問題視されている団体だ。信者は20万人ほどといわれ、セウォル号の運航会社の社員の9割が信者という。
女性信者32人の集団自殺事件
ユは1941年に日本の京都で生まれ、戦後まもなく韓国へ渡ったらしい。その後、宗教家の娘と結婚。宗教家が主宰する宗教団体に信者として入るかたわら、1970年代に会社経営に乗り出した。87年には信者だった女社長を含む女性32人が集団自殺し、ユの関与が疑われて取り調べを受けている。
紀藤弁護士は「この集団自殺はお互いに殺し合った陰惨な事件で、韓国では大問題になりました。女社長のお金が教団に流れ、巨額の負債を抱えたのではないかと考えられています」という。
90年にはユが経営する運航会社の観光遊覧船が、ソウル市を流れる漢江で沈没して15人の死者を出した。さらに、91年には信者の献金した金をユが私的に流用し、詐欺罪に問われて懲役4年の実刑判決を受け服役している。
当局は安全対策手抜き知ってて放置?
紀藤弁護士「基本的に(ユが運営する)事業は宗教団体のサイフみたいなもので、今回の事故でも安全対策に回さずに、お金を収奪していたのではないかと見て背信、横領、脱税などの容疑でも強制捜査されています」
作家の吉永みち子「こんな会社だったってことは初めて知りましたよ。当局はこういうことをつかんでいて放置していたんですかね」
紀藤弁護士「つかんで放置していたのが本当のところだと思います。大きなキリスト教団はみなわかっていましたからね」
沈没事故は事故そのものだけでなく、さまざまな方向へ広がりそうだ。