イギリスの人気オーディション番組で優勝し、携帯電話ショップの店員から世界的オペラ歌手にになったポール・ポッツの半生を描く。主演はジェームズ・コーデン。
ポールは子どもの頃から典型的ないじめられっ子だったが、「オペラ歌手になる」という夢があった。現実は大人になっても冴えないままの携帯電話ショップ店員だ。そんなポールにも恋人ができる。ジュルズ(アレクサンドラ・ローチ)はポールの夢を応援し、イタリア・ヴェニスへのオペラ留学を決意させる。
留学先の学校で才能を認められたポールは、世界三大テノールの一人、パヴァロッティの前で歌うチャンスを得る。しかし、自信が持てないポールは緊張でうまく歌えない。パヴァロッティに「君はオペラ歌手にはなれない」と言い渡されてしまい失意のまま帰国する。ジェルズとの連絡も絶ち、父親が務める溶接工場に入社したが、当然ながらすぐやめてしまう。
まったくいただけないテレビ映像の使い回し
そんな冴えないポールがいかにして世界的なオペラ歌手になったか。歌唱部分はすべてポール・ポッツ本人が吹き替えしているので、迫力のある美声に酔いしれることができる。ポール役のジェームズ・コーデンもオペラの歌唱法を勉強したようで、吹き替えと動きに違和感がない。
ただ、幼少期からオーディション番組に出演するまでのエピソードを単に羅列しているだけのようなストーリーは退屈だった。山場であるはずのオーディション場面も予選までしか描かれず、辛口で有名な審査員側の映像は実際のてれび番組の映像を使用しているため、何とも不自然なのである。映画とテレビの画作りは全く別のものであり、テレビ番組のカットをそのまま映画に流用するときは、はっきりとした狙いがなければならないと思う。「予算がなくなったからこれでいこうか」くらいの安易な考えでやってしまったのではないだろうか。最も大切なシーンだからこそ、純粋な映画の力で描き切って欲しかった。
野崎芳史
おススメ度☆☆