高速道路を走っていた観光バスが中央分離帯を突き破って反対車線を逆走し、9人がケガをした事故で、バスの運転手は8時間前にも別の事故を起していたことが分かった。
観光バスは回送中で乗客は乗っていなかったが、乗客がいたら大惨事になるところだった。高村智庸リポーターが観光バス会社を訪れると、社長が運転手を兼ね社員はゼロという呆れた会社だった。
仕事キツイと次々退社
事故は20日(2014年4月)午後6時ごろ、愛知県一宮市の名神高速で起こった。観光バスが中央分離帯を突き破って反対車線に飛び出し、そのまま走り続けてトラックや乗用車など9台に次々と衝突して9人が軽傷を負った。63歳になる運転手が居眠りをしていたと見られているが、この運転手は8時間前にも長野県安曇野市で信号待ちの乗用車に追突する事故を起こしていた。このときは、台湾からのツアー客30人を乗せていたが、幸い乗客にけがはなかった。原因はわき見運転だったという。
2度も続けて事故を起こした運転手は、大阪府能勢町の「NEK交通」の運転手で、実は社長でもあるという。過酷な仕事に嫌気して運転手が次々とやめていき、3月までいた女子事務員もやめて社員ゼロ。地元の同業者も「あの人は『お前らに何も言われることはない』という人だから、ちょっとついていけないですね」と交流はないようだ。
所有する7台の観光バスは社長自ら運転するほか、アルバイトの運転手を使って動かしていた。警察は自動車運転過失傷害の疑いでNEK交通を家宅捜査したが、社員ゼロでも制度上は問題はないというおかしな制度も浮き彫りになった。
規制緩和で参入自由、行政チェックは事故起こってから…
高木美保(タレント)「社長自身が運転手を兼ねているということは、ムリな運転を注意する人がいないということでしょう」
舘野晴彦(月刊「ゲーテ」編集長)「食べていくためには何でもあり。バックグラウンドがまさかこんな会社だったと知ったら、とてもこの観光バスに乗れませんね」
司会の羽鳥慎一「韓国の旅客船沈没の会社に似てますよね」
「似てますね」とジャーナリストの岩上安身が規制緩和の弊害を指摘した。「バックグラウンドにあるのは規制緩和ですよ。この10年余りで業者は2倍に増えたが、バス1台の利益は3割減になっています。ひたすらコストカットしないと経営が成り立たないという会社だらけなんです。問題は、入り口を開けたままなので自由に参入でき、行政のチェックは『事故後』という不完全な仕組みをつくってしまったことです」
これが規制緩和の現実の姿である。安倍首相も成長戦略の柱の一つに規制緩和を掲げるが、これで効果を期待できるのかどうか。