のどかな地方都市で超美人OLの他殺体が見つかった。特ダネをモノにしようと奔走するテレビ局スタッフの「つぶやき」にネットユーザーが反応していく。美人で性格も良く、職場のアイドルだった被害者に何があったのか。彼女をめぐる証言が重なり「物語」が作られていく。はたして、それは真実なのか。
綾野剛演じるテレビ局スタッフのカメラを通して、語り手が次々と変わる「藪の中」スタイルになっている。話をあっちこっちにもっていきながら、最後のどんでん返しできっちり落とす。そうした物語としての収まりの良さがあったうえで、全編を通して「安全な所から他人を語ろうとするときの人間のいやらしさ」をじっとり滲ませる。
無邪気な他人が浴びせる罵詈雑言「魔女」「死ねばいいのに…」
原作は以前に読了していたのですが、かなり忠実です。設定はいじっているし、多少の誇張はあるけれども、エッセンスの部分は同じ。ここまでコンプライアンス意識が希薄なテレビ局は存在しないと思いますが……。そうした細部の「ちょい盛り」に目をつむれば、サスペンスとしても面白い。
特徴的なのは、テレビ局スタッフの綾野が取材内容をツイッターに漏らしているという設定の見せ方だ。伏字を交えながら投稿しつづける綾野に、ネットユーザーが次々と反応する。その流れの中で糾弾され、実名や個人情報をさらされ、作り上げられたイメージがさらに人々の関心を集め、過激な人物像が作りあげられていく。
ドラマの「電車男」では、2ちゃん仲間が画面に顔を出して「電車男」に声援を送っていたけれど、この映画ではインターネットユーザーの顔は登場しない。顔も知らない仲間が温かく主人公を応援していた「電車男」のときは好意的に受けとめられていた「無邪気な他人」が、「白ゆき姫」では「悪意なき加害者」として描かれる。「魔女」「死ねばいいのに」……画面から伝わるインパクトが半端ないっす。情報が一人歩きしていく様もリアルでした。改めて、情報化って怖いわぁ。