北朝鮮並みになってきた「安倍教育改革」愛国心・忠誠心叩き込め
さて、この欄は安倍首相に対する批判が多いと思われる方もいると思うが、正直、私は安倍首相という人は好きではない。憲法を変えて戦争のできる普通の国にしようという発想も嫌だが、教育問題でも「戦前回帰」とでも言うよりほかない古くさい考え方が我慢ならない。時の為政者の考え方で教育の根本のところがころころ変わってもらっては、教育現場も混乱するし、結局は子どもたちにその弊害が及ぶのだ。
安倍首相の教育に対する考え方は北朝鮮と似ているような気がしてならない。だいぶ前になるが、1か月ほど一人だけで北朝鮮に招待されたことがある。そこで私が見た子どもたちは礼儀正しく、幼稚園生でもピアノやバイオリンを見事に弾いた。小さな大人が子どもの服を着て弾いているのではないかと疑いたくなるような腕前であった。通訳はわが国の子どもはみんなこれぐらいのことはできますと説明したが、そんなことはあるはずはない。英才教育を受けたごく少数と、満足な教育も受けられない多くの子どもたちがいるに違いない。
学校へ行かなくても、毎日のテレビや映画、北朝鮮の人が好きなオペラまで、明けても暮れても日本帝国主義打倒のプロパガンダばかりである。おそらく教科書も同じであろう。そうして育ってきた北朝鮮の人間が日本嫌いになるのは当然である。それほど教育というのは影響が大きいものだから、時の権力者が思いつきで自分のいいように変えてはいけないこと、いうまでもない。
そこのところが安倍首相は分からないらしい。週刊朝日によると、横浜の市立中学校では2012年春から、歴史と公民の授業で「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社の教科書を使っているそうだ。国旗や国歌、日本の伝統文化に関する記述が多いのが特徴だ。この教科書は中田宏前横浜市長が任命した教育委員の賛成で採択が決まったという。
<歴史教科書を開くと、大東亜戦争や大東亜共同宣言などの用語、記述が目につく。日本国憲法はGHQ (連合国軍総司令部)の押しつけ憲法との位置づけで一貫。
『憲法は変えたほうがいい』。そんな気持ちにさせてしまうような書きぶりだ。(中略)
日本の神話や東京裁判、昭和天皇の生涯などに1~2ページを割いて詳しく紹介している。ご丁寧なことに、06年の安倍内閣の教育基本法改正を取り上げて、『伝統と文化を尊重し、わが国と郷土を愛する』などの教育目標にまで触れている>(週刊朝日)
これまでの1年3か月で出てきた安倍流教育改革のメニューは数多い。「いじめ対策の法制化」「教育委員会制度の見直し」「道徳の教科化」「英語教育の早期化」「大学入試改革」「教科書検定基準の改定」「官民による留学支援」など、教育を通じて「強い国」を作る狙いだと週刊朝日は書く。
そういえばこんなニュースが東京新聞(4月17付)に載っていた。<青森県立青森高(青森市)で十四日朝、一年生二百八十一人全員の机に、「教育勅語」の原文を記した紙が置かれていたことが十六日、分かった。
勅語は太平洋戦争以前、国民道徳や教育の基本理念とされた文書。外部からの侵入の可能性もあるが、同校の小川拓哉教頭は「誰が何のためにしたのか意図が分からない」と困惑している>
安倍首相のお先棒を担ぐ輩がやったことなのか。そのうち学校の正式な配付文書として配られるようになるかもしれない。
首相側近の議員の1人もこう見ているそうだ。<「首相は問題を見つけると根本から直したがる性格です。改革することに意味を見いだしている。米国の占領時代に土台が固まった憲法と教育はまさに問題の中心。とにかく教育改革を進めて国民の愛国心を養い、さまざまな環境を整えて憲法改正へとつなげたい思いがある」>
愛国心や君に忠の心を植え付けたいなら北朝鮮に行って学んできたらいいのではないか。世界中でアソコほど愛国心と忠誠心が国民に浸透している国はないのだから。
教育評論家尾木直樹氏はこう話す。<「教科書はあくまで教育の手段なんですから。教育をするのは教育現場。でも現場を信用しない人が政策を出す。大きな矛盾を感じます」
日本の戦後教育のどこがどう間違ったのかを説明することもなく、強い国、愛国心、為政者に対する忠誠心をむやみに要求するのはやめてもらいたいものである。