メディアには格好のネタ、理研・研究者は騒いでくれれば予算つく…はしゃぎ過ぎたツケ
私は門外漢だからコトの真相などわかりはしないが、今回の騒動を私なりに総括してみようと思う。小保方さんも自ら認めているように、研究者としては極めて未熟で、知らなければいけない最低限の知識もなかったことは間違いない。笹井氏が彼女の発想力を高く買っているが、そうならば、研究者としてではなく、企画プレゼンターのようにして使えばよかったのである。理研の対応の遅れや不十分な調査、共著者なのに論文の稚拙な間違いさえチェックできなかった、あまりにも無責任な笹井氏の態度も責められて然るべきである。
小保方さんの『色香』や付け睫毛、ヴィヴィアン・ウエストウッドの指輪に見とれて、STAP細胞のなんたるかを検証もせず、世界的な発見だ、ノーベル賞ものだとバカ騒ぎしたメディアの罪も重い。
だが、これらのことと、STAP細胞の可能性については分けて考えるべきであろう。私は笹井氏の話を聞いていて得心がいった。STAP細胞は大きな可能性をもった「仮説」だったのだ。にもかかわらず、斯界の第一人者たちが共同執筆者に名前を連ねての『ネイチャー』誌への論文寄稿と記者会見で、iPS細胞を超える万能細胞がすぐにでも実用化するとメディア側は勝手に『勘違い』し、国民もそう思ってしまったのだ。もちろん、研究者としては「ノーベル賞」ものの研究だと騒いでくれたほうが予算が付きやすいから、あえて騒ぐに任せたのではないか。
実際のところ、STAP細胞研究は笹井氏のいうようにまだ緒に就いたばかりの「仮説」なのだから、これからうんざりするほど長い時間をかけて検証していかなくてはいけない。コペルニクスが地動説をいい始め、ガリレオが地動説に有利な証拠を多く見つけたが、それをニュートンが完成させるまでに100年以上かかっているのだ。
日本の再生科学の分野では第一人者の笹井氏が、本当に「STAPは有望で合理的な仮説と考える」のならば、小保方、笹井氏を中心とした研究チームを作り、あと何十年かかろうとこの研究を続けさせるべきだと思う。そして、STAP細胞をつくることに成功し実用化できれば、今回のことで地に堕ちた日本の科学技術の信用を取り戻すことができるはずである。