オリンピックを狙うようなアスリートが激しい練習をし、体重を厳しく管理していれば、疲労骨折などが起こるだろうとはなんとなく理解できる。しかし、月経と骨折の関係を思いたる人はなかなか少ないかもしれない。クローズアップ現代によれば、女子運動選手が疲労骨折を起こす要因(のひとつ)が、「無月経」(3か月以上生理がない)だそうである。
月経に伴い分泌される女性ホルモンは骨の形成に欠かせないものである。だが、競技のために厳しい食事管理や体重制限をしていると、月経がなくなり女性ホルモンが減少する。「人が生きていくためにぎりぎりの状態になると、最初に切り落とされるのは生殖機能。それで無月経になると考えられます」(目崎登・筑波大学名誉教授)
その状態が続くと、骨はスカスカにもろくなって骨折しやすくなるそうだ。幾人かの選手が無月経、疲労骨折について証言した。引退した有名マラソン選手も現役時代に12年間も無月経だったと言う。この選手はたびたび疲労骨折を起こし、それが選手寿命にも影響した可能性があるという。
全国大会レベルの高校女子選手ほとんどが生理なし―3分の1に障害
こうした無月経は、骨や生殖機能が発達する時期の10代女性にとって、とりわけ深刻な問題であるが、NHKが調べたところ、10代選手の無月経は日常化しているようである。陸上、体操、新体操、バレーボール選手の強豪大学生にアンケート調査(417人が回答)を行ったところ、45%が中高時代に無月経を経験している。これは一般の4倍の数だという。さらに無月経経験者のうち約3分の1が疲労骨折を起こしていた。
一方、高校指導者を対象としたアンケート(640人が回答)では、「全国大会レベルではほとんどの選手が無月経」「生理がなくて当然」といった回答があり、無月経と骨折の関係について半数以上が知らないと回答したという。骨折などを治療する医師でも「生理不順、無月経、摂食障害が疲労骨折の大きな原因であることを知らない先生がいる」(桜庭景植・順天堂大整形外科教授)そうである。
一般人はおろか、選手、指導者や医師の間ですら、無月経と骨折の関係まだまだ知られざる事実のようだ。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2014年4月15日放送「無月経、疲労骨折…10代女子選手の危機」)