STAP細胞の論文をめぐる論争の渦中のひとり、理化学研究所の発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹・副センター長はきのう16日(2014年4月)に会見して、「STAP現象はすなわちSTAP細胞」で、「検証する価値のある合理性の高い仮説だ」と前向きの見解を示した。
笹井氏は再生医療の分野で世界的に知られた研究者で、小保方晴子・ユニットリーダーが主著者になって執筆した論文全体を統括し、小保方氏を直接指導する立場にあった。自らも執筆している。その論文に疑惑が持ち上がり、理研も「ねつ造」と断じたことで、これらに答えるためにと、会見は理研が設定した。
「簡単な実験のようで実は難しい」
笹井氏はまず「論文に関して、多くの混乱と疑惑を招く事態をお詫びする」と頭を下げ、質問に答えた。質問は以下の3つに集中した。「STAP細胞は存在するのか」「論文の『ねつ造』『改ざん』についての見解」「論文は撤回するのか」だ。
笹井氏はこれに、「STAP現象というのが正しい。これが存在しないと思っていたら共著者にはならなかった」「観察データに基づいて考えると、十分検証する価値のある合理性の高い仮説と考えている」「STAP現象はそれがないと説明できないという不思議な現象なわけです」と説明した。
STAP現象の再現について、「一見シンプルな実験法だと思われれているが、どこが難しいのか。少なくとも4ステップの段階がある」という。(1)細胞を酸性溶液に浸してストレスを与える。(2)2~3日で死なずに残った細胞が小さくなって多能性を示す(マーカーが緑色になる)。(3)3~5日ごろに細胞が集まり細胞塊を形成。(4)5~7日で細胞の塊は大きくなり多能性を示す緑色が強くなる。
それぞれのステップが何で促進しているのか阻害しているのかは、「まだ部分的にしかわかっていない」という。ストレスの強弱で全滅したり変化が起きなかったりがあるが、これがよく解明できていないと話す。
小保方氏が「STAP細胞を200回以上作った」といったことには、「多能性マーカーを発現している細胞塊を作ったということ」とし、キメラマウスで完成とする理研の見解とは食い違っているとした。
専門家から出ている「他の現象との誤認」「ES細胞の混入」などの疑問についてはこう否定した。(1)自動撮影の顕微鏡の動画があり、ねつ造は難しい(2)非常に小さな特殊な細胞(3)他の万能細胞ではつくれない胎盤などができた――を上げている。