海のない埼玉県の意外な場所できれいな真珠が採取され、売りに出されるそうだ。1964年の東京五輪でボート競技会場にもなった戸田市戸田公園内の戸田漕艇場で、溜め池で東京五輪以来、水を入れ替えた形跡がない。05年にはアオコが大量発生して、競技者からは「嫌な臭いがする」「水が汚くてボートを漕ぎたくない」といった苦情が出た。その漕艇場で真珠が取れるようになったのだ。
水もきれいになって一石二鳥
真珠養殖の経緯はこうだ。漕艇場を管理する埼玉県ボート協会の和田卓理事長は、浄化装置を設置すると億単位の経費がかかることから思案していたところ、イケチョウ貝に浄化作用があることを聞いた。埼玉大学の協力を得て、浄化作用能力について実験をしたところ、汚水がどんどん変わって透明になり、濾過されることが実証されたのだ。
しかし、浄化のためだけに貝を沈めるでは面白くないと、試しに貝の中に真珠の元となるカケラを入れたところ、いく粒ものきれいな真珠ができていた。そうはいっても、こんなところでとれる真珠の価値はいかほどか。全日本象牙卸売センターの土屋雅右取締役は「質的には非常にいい」と話す。
「よくできたと思いますが、付加価値をいかに付けるかでアクセサリーとしての価値は決まります。これを女性選手が着けて優勝でもすれば、ラッキー真珠として一つのブランドが確立する可能性があります」
隣りは同じ水路にある戸田競艇場で、大穴でも当たれば名物なることは間違いないかも。
値段は一粒100円程度で
値段はどのくらいで売られるのか。試算したところ、一番きれいな珠でも、そのままでは1個100円。60粒ほど使うネックレスに加工すると卸値で6000円、小売では2万円になる。それでも普通のアコヤ貝から作るネックレスの3分の1から4分の1の安さという。
ジャーナリストの青木理「以前は選手のユニフォームが緑色に変色するぐらい汚れたらしいですが、これできれいになるんだからグッドアイデアです」