凶悪犯人役でも刑事役でも、人のいいお巡りさん役でも様になった。名脇役の蟹江敬三が先月30日(2014年3月)、胃がんのため亡くなった。昨年暮れに体調不良を訴えてがんがわかったが、末期で手のほどこしようがなかったという。しかし、亡くなる2週間前まで仕事をしていた。
『あまちゃん』では忠兵衛じいちゃん「大好きだった」(能年玲奈)
昨年はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」に、主人公の祖父・忠兵衛役で出演した。その「あまちゃん」の能年玲奈(20)がメッセージを寄せた。「忠兵衛さんが大好きです。あまりに突然で、どう受け止めたらいいのか戸惑っています。蟹江さんの内に感じるパワーと放出するパワー、どちらも心地よくて、忠兵衛さんのシーンは楽しみにしてました。すっごく大好きでした」
忠兵衛の娘役だった小泉今日子は「船乗りの忠兵衛父さんは最後にだれにも告げずこっそりと漁にでました。だからまたひょっこり帰ってくるような気がしてなりません。怖い役も多かったけれど、優しくて笑顔が素敵でした」
蟹江が演劇の道に入ったきっかけは、高校のときに劇に出たことだった。「誰しも見られたいという欲求がある。(内気で)押さえつけられていたものが、高校で出ちゃった」と語っていた。高校を卒業して劇団に入った。鋭い目つきがいいと、悪役を演じることが多かった。
50年のつきあいになるという演出家の蜷川幸雄(78)は「破壊的な青年をやるとものすごくよくて、人気もあっていい俳優だった。反抗する若者が蟹江の一番いい仕事だった」「泣き言を言わない。愚痴をこぼさない。がまん強くストイックだった」という。
「ちゃんとした老人演じられるようになるまで頑張りたい」
蟹江のターニングポイントになったのが、1980年のドラマ「熱中時代」のお巡りさん役だった。水谷豊主演のドラマは最高視聴率40%をとった。同僚のお巡りさん役で共演した峰竜太(62)は「大きく変わることができたとご自分でおっしゃってた」と話す。悪役役者がひとのいいお巡りさんになって、一皮も二皮もむけたということか。
以後、ドラマ「スケバン刑事」「鬼平犯科帳」「龍馬伝」、映画「蒲田行進曲」「火宅の人」「華の乱」などで活躍する。長男も長女も俳優の道を歩む。長女の栗田桃子さん(40)は「どの作品でも強烈な印象を残して輝き続ける父を誇りに思います」という。2012年には日本映画批評家大賞のゴールデン・グローリー賞を受賞した。その授賞式で、「10年先か20年先か、ちゃんとした老人を演じられるようになるまでなんとか頑張りたい」と話していた。
司会の加藤浩次「先月17日まで仕事をされていたと」
キャスターのテリー伊藤「残念ですね。胃がんって、早期発見なら治ってた。蟹江さんのすごさは67歳でも悪役ができること。憎まれる力を演技でできる人はなかなかいませんよ。もったいないね」
後日お別れ会が行われるという。