「袴田巌は犯人じゃない」感づいていた捜査員・裁判官!証拠隠蔽・捏造の検察シナリオに乗って死刑判決

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   袴田事件の再審が認められた。静岡地裁の決定は「捜査機関が証拠をねつ造した疑い」をあげ、「留置は耐え難いほど正義に反する」と即日、袴田巌死刑囚(78)を釈放した。にしても逮捕から48年である。事件は「証拠とは何なのか」という重い問いを投げた。

   再審の決め手は、最新のDNA鑑定と検察が渋々開示した約600点もの埋もれた証拠の中にあった。裁判にどの証拠を出すかは検察の裁量だ。被告に有利なものはまず出さない。「クローズアップ現代」は証拠に関わる人を追った。

「有罪」に不利な関係者証言は握りつぶし

   元捜査員の1人は「物証が乏しく焦りがあった」という。自白を迫る方針から、1日12時間、連日深夜に及ぶ取り調べで、19日目に袴田さんは犯行を認める供述をしたが、裁判では一貫して無実を訴え続ける。

   一審の判決を書いた裁判官の1人、熊本典道さんは「自白調書への疑念がぬぐえなかったですね。警察の捜査はおかしいと思いました」という。裁判開始から1年も経って、味噌タンクの中から5点の血染めの衣類が見つかり、これが有罪の決め手となった。再審の決定では、これを「不自然だ」とし、証拠のねつ造を疑った。

   当時、おかしいと感じた人は警察内部にもいた。事件直後、味噌タンクを徹底的に調べた捜査員は「何もなかったのは間違いない」という。5点が出てきた時は驚いた。警察に尾行されていた袴田さんが「自分で入れるのは不可能だった」

   その衣類のカラー写真もねつ造を疑わせる根拠になった。パンツの色が白い。弁護側が同様に1年間味噌につけたパンツは真っ茶色だった。「浸かっていた時間はもっと短い」。さらにズボンのサイズがあった。袴田さんには小さすぎた。検察は「味噌で縮んだ」「袴田さんがその後に太った」と強弁したが、ズボンにあった「B」印から、裁判官は袴田さんのサイズ「ウエスト80センチ」と認定した。しかし、「B」は色を示す記号だった。メーカーはそれを捜査員に指摘していた。

   元裁判官は「当時この証拠が出されていれば、結論にも影響した」という元最高検検事で、この事件も担当した竹村照雄氏は「当時は立証に必要のない証拠を見直すことはなかった。1、2審で有罪だと思ってるんだから」という。ただ、「再審の決定を読んで眠れなかった。公平な立場で証拠を見ることです」と語る。

   元裁判官の木谷明氏は「恐ろしいことです。制度の欠陥」という。上級審では一審で調べた証拠を元に調べが行われる。証人調べもしない。今回、証拠が開示されたのは「再審だからだ」という。

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