消費税増税をクローズアップするにあたっては、さまざまな切り口があるだろうが、この日の放送の「クローズアップ現代」は「企業はどう(増税を)乗り越えるのか」と「企業」に着目した。総じて「価格競争から脱却する」ことの重要性、デフレ脱却を視聴者に強く印象づけたそうであった。
コスト削減で値段据え置きのアパレル会社、商品絞り込みのエステー
ゲストの松下東子・野村総研コンサルタントによれば、増税に対して企業が取る戦略には――聞けば当たり前のような話だが――3つある。「価格(引き下げ)戦略」「利益追求の(経営)体質改善」「高付加価値化」である。その線に沿って、それぞれ3つの企業が紹介された。
まずは増税後もコスト削減努力で値段据え置きを決めたアパレル会社。これには「消耗戦になる危険性」(松下)や、デフレに戻りかねないなど否定的な見解が示された。
次に日用品を製造するエステー。増税後の2か月で売上高が9億円減少すると見込み、「厳しい環境になってくる」(経営戦略部リーダー)なかで、おもに2番目戦略を取るようだ。利益の少ない(出ない?)商品は売るのをやめるという。1500品目の商品のうち300品目を削減する。
セブン&アイホールディングスは高付加価値化でちょっぴりお高く
次に大々的にフィーチャーされたのは、セブンイレブンやイトーヨーカドーのセブン&アイホールディングス。こちらは自社開発商品の質を高めて価格を上げる戦略を取っている。いわばアベノミクス優等生としてのご紹介である。会長は「(1997年に)消費税増税があり、高くなったから売れなくなったんだと思いこんで、低価格競争に陥ってしまった」「(今回の増税で)流通が価格競争をやりデフレを招くようなことは絶対やってはいけない。日本経済全体にとって大きなマイナスになる」と語る。
セブン&アイホールディングスの開発商品では、素材にこだわった従来の2倍の価格の豆腐、大福などが売れてるそうで、「高品質な商品なら多少高くても買ってもらえる」と自信を深め、さらに高価格帯商品の開発に力を入れてるという。そして、(セブン系の)スーパーらしき売り場には「質に見合った価格」を支持する客がいるというわけで、ある客の「安くなりすぎて美味しくないモノ食べても満足感ないんで」というコメントが消費者代表のごとく紹介された。
昨年末のある調査で世間で景気上向きを実感しているのはわずか13%だそうだが、少なくともNHKにはアベノミクス・キャンペーンがしっかり届いているようだ。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2014年4月1日放送「乗り越えられるか 消費増税」)