理化学研究所の調査委員会はSTAP細胞論文で「小保方晴子ユニットリーダーによる不正があった」と断定したが、幕引きを急ぐ理研の姿勢に批判の声が上がっている。
背景にあるのは、安倍政権が成長戦略の柱に据え、今国会で法案を通そうとしている「特定国立研究開発法人」創設だ。理研がその候補にあげられていた。
潤沢な予算使える「特定国立研究開発法人」に指名
理研の野依良治理事長は1日(2014年4月)に行なった最終報告の記者発表を早々に切り上げて下村文科相を訪れ、2日には自民党の「文科・イノベーション合同会議」に自ら申し出て説明を行なった。説明が終わって出て来た野依理事長は「先生方から再発防止に努め、その方策を早急にまとめてほしいと要請されました」と語り、今月末をメドに再発防止策に取り組むという。
小保方リーダーひとりを悪者にして切り捨て、組織への疑惑を残したまま幕引きを図る理研が候補になっている特定国立研究開発法人とはいったい何なのか。元になったのは1月24日の安倍首相の施政方針演説で、「超一流の研究者を集めるため、経済社会を一変させる挑戦的な研究開発を大胆に支援する」というひと言。浮上したのが高額な給与で優秀な研究者を集め、潤沢な予算が使える法人の創設だった。理研は先月18日にその新たな法人の候補として決定していた。
この法人創設の構想について、科学ジャーナリストの大朏博善氏はこう説明した。「理研をこの法人にするための法律を、今国会で成立させようとしているんです。簡単に言うと、科学のトッププレヤーである理研、もう一つ、技術のトッププレヤーである産業技術総合研究所を2トップという形にして、日本の科学技術のプレーを日本という一つのグラウンドでプレーさせようという法案です。
このスケジュールで動いていたら、突然STAP細胞問題が起きた。理研の調査委員会が最終報告を急いだり野依理事長が政府及び自民党サイドに説明に行ったのも、初めのスケジュールに戻そうとしていると見ると理解しやすいですね」
法人創設は今月中旬までに閣議決定しないと今国会成立は間に合わないという。そこでトカゲの尻尾を切り幕引きに走ったのだろうか。