難しい「遠地津波」予測…途中の島などで方向・高さ・スピード変化
片田教授は遠いところから来る遠地津波の予測の難しさも指摘し、1960年のチリ地震津波をコンピューターの画面を使って説明する。「チリといいますと、地球の真裏で日本と約1万7000キロ離れています。チリで発生した津波は太平洋を広がりながらやってきますが、この時はハワイ諸島で屈曲して集約され、日本に照準を合わせるように進んできました。距離が長いものですから、途中にある島嶼部の影響を受けますので、高さや到達時刻が予測しづらいのです」
津波は海が深いところではスピードが速い。陸地に近づいて浅くなると、急ブレーキがかかり、そこへ後から追い付いてくる波がかぶさり沿岸部で急に高くなる構造があるという。
齋藤「台風や高波とは違いますね」
片田「高波は波長、波と波の間隔が数メートルから数百メートルで、チャポンといったら、その後ろには何もないですが、津波は波長が数キロから数百キロに及び、一つのうんと長い波と考えた方がいいですね。加えて、海の底から水面までの水が全部まとめてやってくる。そういうイメージです。東日本大震災のときに、津波の真黒な水が見えましたが、あれは海底から巻き上げてきたからです」
押し寄せてきた津波は街を破壊し、また強烈な力で引き返す。怖いわけである。片田教授は大震災で子どもたちの命を守った「釜石の奇跡」の立役者だが、「避難3原則」としてあげるのは(1)想定にとらわれるな(2)最善を尽くせ(3)率先避難者になれ、である。「常にいかなる事態もありうるというもとで、最善をつくすのみです」という。