「Ai」という言葉をご存じだろうか。CTやMRIで遺体を検査する「死亡時画像診断」のことで、外見からはわかりにくい死因を究明することができる。犯罪、とりわけ児童虐待の見逃し防止とその抑止に役立つと期待されている。
死体解剖せず「虐待の有力証拠」
児童虐待は年々増加しており、2013年だけでも475件発生し、うち25人が死亡している。虐待は長期にわたって殴られたり蹴られたりしている場合が多く、傷が古くなってくると表面上は痕跡がわかりづらい。だが、頭部や胸部のCT検査によって出血が見つかれば、虐待の有力な証拠となる。
Ai専用のCTを撮る施設は全国で20か所あるが、地域の小児センターなどでも導入されている。死因解明には死体を解剖するのが基本だが、解剖には手間と時間がかかるし、遺族も躊躇する場合が多い。亡くなっているとはいえ、体にメスが入ることに抵抗を感じるのだ。その点、Aiは手間も時間も少なくてすむ。埼玉県立小児医療センターではこれまで年間亡くなる40~50人のうちAiを実施するのは10人程度だったが、今年(2014年)は3か月で10人に達しており増加傾向にあるという。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト