新しい万能細胞として注目されていた理化学研究所のSTAP細胞の論文に疑念が強まり、共同執筆者の山梨大学・若山照彦教授が「研究の根幹に関わるところで信じ続ける事が難しい状況になってきた」と、論文の共同執筆者(2本の論文で計14人)にメールで論文の撤回を呼びかけた。
共同執筆者「いったん論文取り下げて、非難されないもの発表」
若山教授は1月29日(2014年)に小保方晴子ユニットリーダーと一緒にSTAP細胞の成果を発表したキーマンの一人だ。その若山教授は「信じられないほどいろいろなデータの間違いが見つかっている。信じ続けるのが難しい状況になっている。いったん論文を取り下げて、間違いのない正しいデータを使って誰からも非難されない論文として発表したほうがこの論文の成果を高めるには大事だろう」と語っている。
指摘されている疑問点は、論文の画像が2011年に小保方ユニットリーダーが書いた博士論文で「骨髄の細胞由来」として使った画像と酷似していること。若山教授はもしSTAP細胞の画像でなかったら、研究の根幹が揺らいでしまうという。さらに、別の研究者の論文を無断引用した疑いも出ている。
理研はこの時点では些細なミスとし、「成果は揺るがない」と考えていたようだが、その後も世界中の研究者から「再現できない」という声が強まったため、理研は作製手順の公表に踏み切った。しかし、今度はその内容が当初の論文と矛盾するとの指摘が出た。
説明もしなければ取材にも応じない理研
毎日新聞科学環境部の元村有希子編集委員はこう解説する。「どうしてこういう騒ぎになったのか。(理研は)誰も説明しないし取材にも応じない状況で、真相がわからないまま不信が膨らむほうに働いています。論文の修正ではすまないだろうと思います」
井上貴博アナ「論文の撤回というのは、科学者にとってどういう意味を持つのでしょうか」
元村「科学の世界には『パブリッシュ・オア・ペリッシュ』という言葉があります。論文か死かという強い話で、論文ですべての研究者の業績が評価されます。だから論文には厳密さが求められ、それに相応しくない人は去れという話です。それだけに撤回はかなりダメージが大きいでしょうね。小保方さん自身、理研、共著者14人全員にダメージがあります。最低限、誰がどういう働きをしてどういう間違いをしたか、理研および小保方さんの口から語られることが必要と思います。
論文が撤回されても、何かの細胞ができたというのは面白い現象なので、今後は第三者によって一から研究を見直すのではないかと思います」
論文の無断引用や画像の使い回しをしていたことが事実なら、科学の世界でなくともやってはいけないことだ。割烹着で研究する初々しい姿が話題になったが、小保方ユニットリーダーいまや崖っぷちに立たされている。