ジャンク電子書籍乱売で出版界つぶしに走る文化庁・経団連
ここで出版界の業界ネタを『週刊新潮』から1本。日本で電子書籍市場が広がらないのは、従来の紙の出版権をもつ出版社でも、同じ本を電子書籍化する場合は、契約を別に結ばなくてはならないという「日本的事情」も大きい。そのため、出版界ではCDのように発売元(出版社)が著作権を持てる「著作隣接権」を求めているのだが、週刊新潮によれば、文化庁でそれとは反対の著作権法改正が進んでいるというのだ。
この背景には、電子書籍をアメリカ並みの出版点数にしたいという経団連の思惑がある。これが「電子出版権の新設」で、これが日本に脈々と続く出版文化を壊すと作家の藤原正彦氏はこう憤る。
<「著者が電子出版をする際に、出版社以外の、単に紙の本を電子化して送信するだけの事業者と契約を結べるということ。誰でも手軽に自由に出版できるようになるので、電子本の点数が増え、読者の選択肢が広がるように思えます」>
だがそうではないというのである。<長い目で見れば。江戸時代から続く日本の出版文化を破壊し、ひいては国家の根幹を揺るがしかねない大問題なのです>
本は編集者や校閲が目を通し、間違いや時代考証などをチェックからして本になるのだが、法改悪されれば間違いだらけの電子書籍が氾濫することになり、本全体の信頼が失われることになるはずである。
<「国民は間違いばかり書いてある本にお金を払わないでしょうから、安価な電子書籍が主流になっても、本の購入数はどんどん減るでしょう。国民が本を読まなくなり、読んでも間違った知識しか得られなくなれば、ある程度成熟した民衆の存在が前提になる民主主義は成り立たず、衆愚政治になってしまう。だから、日本の文化、国家にとっての大問題なのです」(藤原氏)>
大学生の40%は本を読まないという統計がある。それでも年間の新刊書籍点数は8万点近くもある。そこにおもしろさや珍奇さだけの電子書籍が大量に加われば、本当に読んでおかなくてはいけない本を探し出すのは至難になる。
私が以前から主張しているように、新刊点数を現在の半分に減らし、出版社と流通、書店が共同してアマゾンに対抗できる電子書店のプラットフォームをつくらなければ、この国の出版文化に未来はない。遅きに失してはいるが、今からでも国を巻き込んだ「出版文化再生」のためのプロジェクトを始めるべきである。