軍事衝突の緊張が高まるウクライナ情勢について、ロシアのプーチン大統領は極めて強気だ。「ウクライナの現・暫定政権はクーデターでできた正当な権限はない」とし、「軍隊の武力行使は今のところ必要ない。だが、その可能性はある。ウクライナ東部で無法状態が生じたら、住民を守るあらゆる方法を使う権利がある」と武力行使も辞さないかまえだ。また、欧米側がロシアへの経済制裁を検討していることに触れ、「ロシアに制裁を強いるものはその結果を考えるべきだ。ダメージは双方に及ぶ」と牽制した。
これに対し、アメリカのオバマ大統領は、「プーチンが何を言おうと、(民族自決という)大原則に沿わない行動をしていることは複数の事実が示している」と非難し、「ロシアの経済的、外交的孤立を招く一連の措置を検討している」と述べた。ただ、「ロシアが軍事介入を本格化させる前に協議する用意がある」とも語り、硬軟取り混ぜた対応を打ち出している。EUは天然ガスの3割をロシアに頼っており、ロシアから逆制裁を受けかねないだけに制裁はできることなら避けたいのが本音だ。プーチン大統領はそれを見透かしたうえで、強気に出ているのだろう。
どうなる?来月の岸田外相訪ロ、秋のプーチン来日
日本の安倍政権はどうか。北方領土の返還交渉問題を抱え、4月(2014年)には岸田文雄外相が訪ロし、秋にはプーチンが来日する予定だ。菅義偉官房長官は4日(2014年3月)、とりあえずこんなコメントを出した。
「わが国はすべての当事者が最大限の自制を発揮して武力行使そのものを回避し、国際法の完全な順守およびウクライナの主権と領土の一体性を尊重する」
すべての当事者と表現しロシアを名指ししなかったのも立場の微妙さを示している。片山善博(慶応大教授)が次のように指摘した。
「どこで収束するか難しい。これだけで収まらないのは、グルジア問題があるし、その他のタジキスタンやウズベクスタンなど、旧ソ連崩壊時にいろんな国ができた。その一部にロシア人が住んでいるからです。
ロシア国籍がなくても、ロシア語を話す人たちを保護する名目で事実上制圧することを国際社会が認めたら、他にも同じようなことが起こる。アメリカはこれは許さないだろうし、解決は難しいですよ」
弁護士の野村修也が言うように「国際社会の力がいま試されている」のだが、国連は実効性のない非難決議にとどまっておりその力はない。