読売新聞が去年末(2013年)に独自調査したところ、「乳幼児健診」の受診がなく所在のわからない乳幼児が全国に4176人いるという。全国最多の12万人の乳幼児がいる横浜市の緊急調査でも608人がわからなかった。市の近藤政代課長は「未受診家庭の中から虐待に繋がるケースが強い」と危機感を強めている。厚生労働省は全国の自治体に「消えた赤ちゃん」に実態を把握するよう通達した。
愛知県豊橋市「虐待ハイリスク担当保健師」配置
2年前に未受診だった4歳の女の子が衰弱死する事件があった愛知県豊橋市では、通常の保健師訪問では面会できなかった家庭を重点的にフォローする「虐待ハイリスク担当」の保健師を配置した。キャリア15年の井上さんもその一人で、この日は1歳6か月検診を受けていない赤ちゃんがいる家庭を訪問した。
保育園から帰る時間を見計らってアポなしだ。不在だったが、電気メーターが回り、2階のベランダに洗濯物があったことから、生活実態ありと判断した。
この日は会えなかったが、体重計や積木など健康状態・発達状態を調べる道具を持って、曜日は時間を変えて何度も訪問することにした。
豊橋市では保健婦部門だけでなく他部署と連携も密にした。衰弱死した女の子の父親は児童手当を受給するため子育て支援課を訪れ、新しい住所を登録していたのに、それが保健婦側に伝わっていなかったからだ。担当者は「待っているのではなく、こちらから寄り添うようにしていかなければと考えています」という。
奈良県宇陀市は所在不明乳幼児をゼロ、つまり面会率が100%だ。どうやっているのか。職員が訪問したときに玄関のドアを開けてもらうよう、出産2か月の親子が市内の商店で使える1万円の商品券を直接手渡すようにしているのだ。
役所側が積極的に動くということが、「消える赤ちゃん」をこれ以上増やさないカギというわけだ。
(磯G)