変に媚びた恋愛シーン余分でもったいない
「良心のお面」を被った社会が、弱者を徹底的に搾取するというスパイラルを平凡な若者を通して描き、夢を見られるのは安全網の中にいるからだと「夢のない時代」の裏側を淡々と描いていく。
ただ、社会派エンターテイメント映画としては恋愛シーンや安易なキャスティングは余分だしもったいない。この演出が派遣会社における雇用側の労働者に対しての生かさず殺さずのやり口のメタファーなのかもしれないが、どちらにしろお粗末だ。修の成長物語として安易な着地をせずに、暗闇から手を伸ばすように、手探りで人間を捉える作り手の実直な姿勢こそが、エンターテイメントを超える映画の力なのだ。観客に媚びることが似合わない真摯な人間ドラマである。
丸輪太郎
おススメ度☆☆☆