浅田真央に佐藤コーチが一言「思いを残すな」世界が酔ったフリー演技の舞台裏

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   ソチ五輪フィギュアスケートで浅田真央選手のフリー演技が終わった直後の佐藤信夫コーチ(72)の横顔が印象的だった。「これで終わった」という安堵感のようなものと、「自分はこの子に何かをしてやれたのだろうか」という思いが重なり、ちょっと苦笑しているようにも見えた。

   フリー演技に臨む浅田を佐藤は「思いを残すな。持てるものを全部出してこい」と送り出した。阿部祐二リポーターは「浅田選手はフリー演技の練習に遅刻してきました。前日の不本意なショートプログラムのことを思い出し、なかなか寝付けなかったそうです。それが佐藤コーチの一言で表情も演技もガラリと変わりました」と言う。

選手に自信持たせる「奥の手」

   佐藤が浅田のコーチに就任したのはバンクーバー五輪後だ。佐藤はそれまでに1980年のレークプラシッド五輪で8位入賞の松村充、荒川静香、安藤美姫など日本を代表する選手を育てていた。その松村がこんな話をする。

   「レークプラシッドの時、僕は扁桃腺が腫れ40度近い熱もあり、医師からもドクターストップを宣告されていました。佐藤コーチの口癖は『リンクのフェンスが閉まったらあとは一人、誰も助けることはできない』なのですが、その時は『演技の途中で倒れたら俺がすぐに助けに行く。だから思い切り滑ってこい』と言われました。この一言のおかげで8位入賞を果たすことができました。

   テレビを見ていて、佐藤コーチは浅田選手にも最後の奥の手を使ったなと瞬時にわかりました」

文   ナオジン| 似顔絵 池田マコト
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