<はじまりは5つ星ホテルから>
バリキャリ女の「自分探し」いささか食傷!「超高級ホテル格付け調査員」お洒落な仕事だけどむなしい…見どころは世界の5つ星実在ホテル

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2013 Biancafilm Licensed by RAI S.p.A. - Rome, Italy. All Rights Reserved.
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   共感できないわけじゃない。でも、バリキャリ女の「私ってこのままでいいの」という映画の多さに、そろそろ世の中も辟易している頃なんじゃないかなあ。悪くはないのだけれど、同じようなテーマの映画を何度も見たような印象が強い。「セレステジェシー」「大統領の料理人」なんかが仲間にあたります。「セレステ」は、いかに女がわがままかを情感たっぷりに描ききった(ものすごく教訓になる)ところ、「大統領」は主人公の作る料理の素晴らしく美味しそうなところがそれぞれ見せ場でした。

   この映画は実在の豪華5つ星ホテルが独自色の出しどころで、いやあ、次から次へと出てくる高級リゾートホテルはたしかに圧巻でした。安宿では絶対に採用されない白基調の調度品に、天井の高い城のようなホテル。どこまでも続くバカンス気分。しかし、なんとなく「この女、薄っぺらっ」という違和感が残ってしまう。

華やかな見た目とは裏腹に給料は悪く、ろくに家にも帰れない生活

   主人公・イレーネの職業はホテルの覆面調査員で、世界の高級ホテルを泊まり歩き、ステイを繰り返して格付けを行うのが主な仕事だ。だが、華やかな見た目とは裏腹に給料は悪く、ろくに家にも帰れない生活が続いている。家庭を持つなんてこととはおよそ無理な業界だ。それでも、自分の仕事に誇りがあるイレーネは、専業主婦に収まった妹を無意識のうちに下に見てしまう。

   忙しく、何かと制限も多い仕事だが、何かを得るには失わねばならないものもある。やりがいのある仕事があって、恋人のような男友達がいて、毎日ホテルで高級ゲストを演じるのもいいじゃないか。そう割り切っていたイレーネだったが、親友に不測の赤ん坊が生まれることが分かり、妹に不安定な生き方を心配され、何かが切れてしまう。

   そんな折に、あるホテルで出会った女性にイレーネは魅了される。あんまりに世話を焼かれると何もかもが信じられなくなる。高級ホテルには薄っぺらい非日常しかない。そう言い切る彼女に惹かれるイレーネだったが、彼女は唐突に姿を消してしまう。そして、その不在がイレーネの心にぽつりと染みを落とす。

「私、少し成長したかしら」ちょっと反省したぐらいで人生わかったような顔するな

   仕事とはいえ、享楽的にリゾート地を転々とする人生に意味はあるのか。自分を待っているのは乾いた部屋だけ。割り切って肯定してきたはずの人生の足場がガラガラと崩れていく。だが、イレーネは日常を見つめ直す機会を得たことで改めて自分を肯定する。きのうより少し視野を広く持ち、自分を許し他人を許し、あすに踏み出す。エンディングは「自分探しモノ」の定番の域を出ないけれど、救いのない「自分探しモノ」なんか見たくないからそれでいい。

   定番こそ正義と受け取るか、ありきたりと受け取るかは、見た人によって分かれるところかも。個人的には、男を失いそうになってイライラのくだりは「セレステ」の方が上、美しい映像という点では「大統領」の方が上という半端な印象だ。加えて、一番大事な「現状の見直し・肯定」プロセスに共感しきれない部分がありました。妹に謝って、親友の女と一悶着してといろいろあったことはあったのですが、「いやいや、その程度の悟りで悩みは晴れたのかよ」と感じてしまった。うーん、他にも感想を聞いてみたい。

ばんぶぅ

おススメ度☆☆

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