ソチ五輪6日目のきのう12日(2014年2月)に行われたノルディックスキー複合個人ノーマルヒルで、渡部暁斗選手(25)が銀メダルをとった。この種目のメダルは1994年のリレハンメル五輪の河野孝典以来20年ぶりだ。金メダルのエリック・フレンツェル(ドイツ)との抜きつ抜かれつは未明の日本を熱狂させた。
W杯チャンピオンと激しいデッドヒート
大変なデッドヒートだった。1周2.5キロ、高低差44メートルを4周するレースで、前半のジャンプで2位となった渡部は1位のフレンツェルから6秒遅れでスタートした。早々に追いついて、3位以下を大きく引き離して2人だけの優勝争いとなった。
カメラがその2人を追いかける。長野・白馬村役場の特設ビューイング会場でも、渡部が所属する北野建設でも、旗を降り声をからして大声援が続く。画面に駆け寄らんばかりの人もいる。
渡部は最後の周回はずっとトップを切っていたが、残り1キロの下りで仕掛けたフレンツェルが、1メートル、2メートルと前へ出ていくのを追い切れなかった。さすがワールドカップ覇者のレース運びは上手い。死力を尽くした2人はゴールと同時に倒れ込んでしばらく動けない。
金と銀の差はわずかだったが、その銀ですら日本には20年ぶりだった。渡部は「去年の世界選手権で3回4番だったのでうれしい」と素直に喜んだ。早稲田大の先輩で北野建設のスキー部長だった荻原健司氏(リレハンメルの団体金メダル)も、個人のメダルはない。
国際スキー連盟のいじわるルール改正克服に20年
司会の小倉智昭「エリックはワールドカップの総合チャンピオンですから、彼を追い越すにはジャンプで超えないといけない。まだラージヒルがある」
3つ違いの弟の渡部善斗(22)も15位に入っているが、前半のジャンプで100メートル越えを出した4人のうち3人が日本人(渡部兄弟と加藤大平)だ。これは団体戦への大きな期待につながる。かつての黄金時代復活も夢ではないかもしれない。
古市憲寿(社会学者)が面白いことをいった。「スキーはやったこともないし、この競技もよくわかってないけど、メダル20年ぶりなんでしょ。日本に不利なようにルールが変わってもとったというのがすごい」
そう、日本がジャンプに強いと見るや、国際スキー連盟はジャンプの得点のウエートを下げたりした。それをまた克服するというのも痛快なことだが、20年はやっぱり長い。