「マルハニチロ」農薬男だけじゃない非正規の恨み!能力型給料に変わって大幅減収
マルハニチロの冷凍食品に農薬「マラチオン」を混入させた阿部利樹容疑者(49)が逮捕されたが、『AERA』は彼の犯行動機は「非正規の恨み」だと報じている。2年ほど前、アクリフーズ群馬工場の事務棟2階で給与制度の変更に伴う説明会が開かれたという。
白い作業着を着た工場の契約社員約100人がスーツを着たアクリフーズ本社の人事担当者2人と向き合うような形で座った。人事担当者は「努力して評価を高めていただければ、時給が上がるため、当面は年収に大きな変化はない」といい、新制度では「頑張った人が報われるんです」と繰り返したそうだ。だが、契約社員にとって、その実態は違うものだった。この集会に参加していた契約社員はこういう。
<「ウソばっかりですよ。私も時給は上がりましたが、年収ベースでは約20万円下がった。60万円下がった同僚もいます」>
阿部は妻と子供の3人暮らし。会社側の説明によれば、勤務態度に問題はなく、時給は契約社員のうち真ん中だったという。だが、2012年4月から賃金体系が「年功制」から「能力型」へと変更されたため、阿部の年収は約200万円に下がったという。前出の契約社員は阿部がロッカールームで「こんな会社もうやめる」「こんなクソ会社どうなってもいい」とたびたび不平不満を口にしているのを耳にしたという。
さらに、元同僚は阿部に同情を感じるとまでいっている。<「会社の幹部が記者会見で『従業員からの不満はなかった』と話すのを聞いた時は、怒りが込み上げてきた。表向きは会社が被害者なのだろうが、待遇を考えると、引き起こした原因は会社にもあるのでは、と思わざるを得ない。他の人が事件を起こしていたかもしれない」>
首都圏青年ユニオン事務局次長の神部紅さんによれば、ここ数年、アクリフーズのような新評価制度の導入に伴って給与が大幅に下がったという相談が増えているという。<「露骨に下げると反発を招くので、方便として評価制度を装っていますが、企業側は最初から人件費削減の目的で導入しているのです」>
したがって、<今も現場に不平不満の種は残り続けている。セキュリティー強化が根本的な解決になるのだろうか>とAERAは疑問を呈している。こうした視点の記事が週刊誌にはもっとあってほしい。阿部が犯した罪は断罪するとしても、その背景にある非正規雇用者の待遇や収入の問題、さらにはこうした派遣社員から上前をはねている派遣会社の構造改革をしなくては、こうした事件がこれからも起きることは間違いないのだから。