韓国に入国した内閣府の男性職員が、北九州市の海岸でゴムボートと一緒に遺体で発見された。事件なのか事故なのか。「朝ズバッ!」はこの職員が韓国に入国した後の不可解な行動を追った。
冬の玄界灘を横断?死因は低体温症か溺死
職員はアメリカのミネソタ大学大学院経済学修士課程に留学中の30歳で、1月上旬に「国際会議に出席する」と届を出して、ミネソタから直接、韓国・ソウルに向かった。そして、6日にソウル市内のボート販売業者を訪れている。応対した店員によると、マスクをして黒いジャンパー姿で、英語で「香港人のアレックス」と名乗り、釣りが好きだといって赤い1人用のゴムボートとエンジンを100万ウオン(約10万円)で購入したという。後でメールで指示してきた送り先は釜山市内のホテルで、受取人は「AlexPo」だった。店員は「だいたい、ここは製品を売る売り場ではないのです。普通はすぐにその場で買ったりしません。それが何の連絡もなしに訪ねてきた」と不審がる。
職員は韓国入りの目的と言っていた国際会議が開かれる8日午後7時ごろ、ボートの送り先である釜山市内のホテルを訪れボートを受け取っている。さらに、市内の機械販売店でバッテリーやエンジン関連品を購入した。その後の韓国内での足取りは分かっていない。
日本政府関係者が調べたところ、職員はソウル市内のホテルには本名で宿泊したが、別のホテルに変名で荷物を預けていたことがわかった。そして、18日に200キロ離れた北九州市の海岸に漂着したボートの中で死亡しているのが見つかった。発見時の服装は黒のズボンにハングル表記のある黒と茶のジャンパー2枚を着込み、靴下を重ね履きしていた。所持品は韓国紙幣と硬貨で25万ウオン(約2万2000円)だけだった。死因は低体温症か溺死の可能性が高いと見られている。
事件性見当たらず、日本政府も韓国に捜査要請できず
寒さと荒波の冬の日本海を軽装で小型のゴムボートに乗り、200キロある北九州まで航行するのは常識で考えられない。森朗気象予報士は「この時期の海流では、釜山港を出港し漂流したとしても北九州に向う可能性は低いでしょう。島根県や鳥取県に向うはず」という。
ナゾだらけの職員の行動について、ミネソタ大学大学院に留学中の内閣府の同僚である高山直樹氏は「どうしてこんなことになったのか見当もつきません。普通の青年だったのに」と困惑している。取材した高藤秋子記者は、「防犯カメラで追跡すれば足取りはかなり判明するでしょうが、これには韓国捜査当局の協力が必要で、現在のところ日本政府からの協力要請は出ていません」という。
TBS解説室長の杉尾秀哉は「(日本政府も)首を絞められた跡とか、明らかな事件性が見当たらないので、どう扱っていいのか困っているのでしょう」と首をかしげた。