<花火思想>
若者よ、孤立を恐れるな!27歳女性監督がブチかます「自爆したっていいじゃないか」

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(C)SKY FISH FILMS
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   コンビニでアルバイトをしながら恋人の美音と同棲生活をしている優介(櫻井拓也)は、夢に出てきた馬の顔をした男のことが頭から離れない。ある日、かつて同じバンドメンバーであった幸雄と再会するのだが、それは優介が忘れようとしていたある事との再会でもあった。

   夢と現実が交錯していく中で、優介は船田というホームレスと出会う。船田は優介ここではないどこかへ連れて行ってくれる存在になっていくのだったが…。『ソーローなんてくだらない』の芹澤興人、『キッズリターン』『半沢直樹』のモロ師岡などが脇を固める。渋谷ユーロスペースにて公開中。

ラスト20分の大爆発!筆者は涙ボロボロになってしまった…

   27歳の女性監督・大木萠の初長編作品で、いまどきの若手監督が撮る映画とは一線を画する。『青春の殺人者』のようなATG作品が持っていた非商業性の空気が充満している。内容も「才能」「夢」「ロック」をめぐる青臭い物語で、若者の価値観と相違がうかがえる。しかし、時代感のズレはこの映画の訴求力になっており、タイムスリップしたかのような感覚が観る者を強く引き込んでいく。時代が変われど、若者の自己実現の弊害になるのは「才能」であり、社会に適応するという「大人の条件」も、言ってしまえば「才能」の世界なのだ。

   閉塞した社会は才能よりも順応を求める。優介とホームレスの船田が出会う銭湯の湯船で二人が煙草を吸うシーンや、ホームレスたちが拾ってきた寿司を食べるシーンには、閉塞した社会に風穴を開けようという大木監督の気概が感じられる。ただ、今の若者がこの思想に共感できるのかは分からない。情報を共有できるようになった現代は、マイノリティになることを恐れる若者を作り上げた。

   大木監督の思想はラスト20分に爆発する。これを言いたいがために『花火思想』を撮ったと言わんばかりに爆音のある歌が流れる。筆者は映画を理解することをやめ、身体を委ねてしまった。予期せぬ涙が流れた。殴られたような、抱きしめられたような、矛盾に包まれ、映画は幕を閉じた。

   エンターテイメント性を殺してまで問いかけをする大木監督の姿勢は、かつて若者だった大人が青臭さを忘れたように、映画とは本来、観た者の人生に影響を与えるものであったことを痛烈に想起させる。

丸輪太郎

おススメ度☆☆☆☆☆

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