投資家「人権軽視の企業には出資しない」
こうした批判の背景にあるのはなんなのか。日本総研・創発戦略センターの足達英一郎理事はこう解説する。「東西冷戦が終わり、世界が1つのマーケットになりました。生産も国境を越えてどこでもできます。その結果、コストが至上命題になり、立場の弱い人、立場の弱い企業にしわ寄せが蓄積しているんです。
最初は、途上国の皆さんに今までなかった収入源が得られたと喜ばれたが、インターネットの普及で、隣の工場、あるいは隣の国の工場はどうか、先進国の労働者は同じ仕事でいくらもらっているのか、情報が瞬く間に広がります。それが人権意識の高まりで、われわれは不平等だということに繋がっているのだと思いますね」
国谷裕子キャスター「人権問題に関して、日本企業の対応は遅れているといわれていますが…」
足達理事「たとえば、異なる宗教を信じる人への祈りの場所をどうするのか。そんな事も人権尊重の要素の一つとして問われるようになってきています。日本企業はまず問題は何なのかということを理解して、欧米企業のスタンダードを参照しながら、どこまでコストを掛けて取り組めばいいのか模索しているというのが実態ではないでしょうか」
日本企業にも現地労働者の人権問題に対し積極的に取り組んでいる企業もある。カンボジアの工場に生産を委託している日本の大手スポーツ用品メーカーの「アシックス」だ。アシックスは定期的に監査チームを7社ある委託先の工場に派遣し、自社が求める労働環境の基準を満たしているかチェックしている。チェック項目は照明や換気、火災への対策など240項目にわたる。児童労働防止のために、従業員を採用する際は複数の証明書の提示を求めるよう指導している。この取り組みついて、尾山基社長は「社会からノーと言われたブランドはなかなか生き返るのは大変ですから」という。
しかし、日本企業は海外進出を加速している割には、ここまで対応している企業はまだ少ないようだ。国谷は「コストが大変掛かる時代になったと戦々恐々として向き合っている企業もいるかもしれませんね」という。
足達理事「投資家がどの企業に投資するか考えるとき、国際基準で人権配慮がきちんとできているか調べて決めている状況があります。安心・安全を考え相対的に国内のほうが安いという例がこれから出てくるかもしれません」
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2014年1月29日放送「グローバル企業の責任はどこに~海外で高まる人権リスク~」)