従業員を酷使し、使い捨てにして利益を上げようとする「ブラック企業」が最近話題だが、「クローズアップ現代」によると、それとは対照的な経営戦略が注目されているそうだ。会社が従業員の健康管理に積極的に関わるというやり方だ。「いまブラック企業の問題が取り沙汰されるなか、このような企業で働いてる方は恵まれてると思いますよね」と国谷裕子キャスターは紹介する。
スポーツジム作ったり、「ヘルシーマイレージ」で健康競争
歯磨き剤大手のサンスターはスポーツジムのような施設「健康道場」を設置し、メタボな幹部社員に業務として2泊3日の研修を義務づけ、運動や生活改善を指導している。施設の運営には年4000万円の費用がかかるが、幹部社員が病気でいなくなるよりはお安いとの考えだそうだ。
大手総合化学メーカーの三井化学は「ヘルシーマイレージ」なる制度を導入した。仕事のあとなどに頻繁にスポーツイベントを開催し、参加するとマイルが貯まる。ポイントは健康グッズなどと引き替えるほか、全員のポイントをランキング化することで競争意識を煽っている。
「健康を守るのではなく、健康を獲得し増進するために、社員が参加しやすいことを工夫してやってきた」(三井化学社長)
このおかげで三井化学では欠勤日数が減り、健康保険組合の赤字解消、業績アップにもつながったという。
まさにいいことずくめに聞こえる健康経営だが、「働く環境への投資ができるのは恵まれた大企業だけとも思えるんですけど、圧倒的に数の多い中小企業の人や非正規の人もそこに入っていけますか」(国谷)という疑問も、もっともに聞こえる。
そんな余裕なんかない、健康を崩したらそいつが悪い、自己責任、代わりなんていくらでもいる―といった考えがはびこる産業界で、はたして「健康経営」は根付くのだろうか。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2014年1月28日放送「『健康経営』のすすめ~会社も町も大変身!~」)