テレビの人気アニメ『サザエさん』の父親、磯野波平役を44年にわたって務め、「日本の頑固親父」を演じ続けた声優の永井一郎さんがきのう27日(2014年1月)、虚血性心疾患のため82歳で亡くなった。「(波平を)死ぬまでやれたらいいよね」と語っていたが、その言葉通り生涯現役を貫いた。
「バカモーンには基準があった。美しい日本を大事にするいい父親なんです」
「バカモーン」とサザエやカツオを怒鳴る姿は、良き時代の一家の大黒柱そのものだった。永井さんは初めは波平に違和感があったというが、「バカモーン」と怒るには基準があることがわかってきてから変わった。
「カツオが常識的でないことをやると怒る。社会人として育てばいいと思っているんだよね。そうだと思ってから、波平がいい親父に思えてきた」
永井さんによると、波平は明治27、8年の生まれだ。「ですから、明治の美しい日本をきちっと保っているところを大事にしてきました」とも語っていた。
仕事に向かう時もタクシーに乗らず、波平と同じような生活を心掛けた。アフレコの様子をみると、波平になり切り、全身を振りしぼり表情をまじえながら声を出していた。
京都大学文学部を卒業、電通に就職しながら俳優をめざすが、声優に転じた。波平のほかにも、『機動戦士ガンダム』のナレーションや『ゲゲゲの鬼太郎』の子泣き爺、『宇宙戦艦ヤマト』の佐渡酒造、映画『ハリー・ポッター』など多くの作品に出演した。
テレビ収録済ませ広島のホテル風呂場で虚血性心疾患
亡くなったのは、広島市内の宿泊先のホテルだった。おととい26日に地元のテレビ局で収録を済ませ、食事をして部屋に戻ったが、チェックアウトの時間になっても姿を見せなかったため、従業員が中に入ったところ、浴槽で倒れているのが見つかった。
気さくな人柄で多くの仲間に慕われていた。突然の訃報にタラオ役の貴家堂子さん(72)は「ただただびっくりしています。孫とおじいちゃんという役柄の中でも、実際にも、本当に良い人でした」と驚いていた。
司会の小倉智昭「あの独特のちょっと枯れた声が向いていたんでしょうね。波平さんの声として定着していましたね」
菊川怜キャスター「日本のおじちゃんでしたね。怒られても愛があるというか」
コメンテーターの宋美玄(産婦人科医)は「44年ということは、30代からあのお爺さん役をされていたのかと。天性のおじさん声というか。後を引き継がれる方が大変ですね」と懐かしむ。
来月(2014年2月)9日放送分までの収録は終わっているが、16日以降は未定で、後任はまだ決まっていないという。