冷凍食品に農薬が混入された事件で24日(2014年1月)、製造したアクリフーズ群馬工場の契約社員、阿部利樹容疑者(49)が偽計業務妨害容疑で逮捕された。 作業衣から農薬が検出されているが、本人は犯行を認めておらず、なぜ事件を起こしたかもわかっていない。
早出・遅出手当廃止で上司を難詰
農薬「マラチオン」混入はピザ、コロッケなど7種類の製品におよび、食べて体調不良を訴えた消費者は2843人に達した。製造工程は製品ごとに異なるため、すべてが集まる梱包過程での混入が疑われた。混入された製品の製造日・製造時間帯のすべてと阿部の勤務時間が合致し、警察は容疑者を阿部に絞ったが、14日の勤務のあと行方がわからなくなった。
24日午後8時ころ、約40キロ離れた埼玉県幸手市内で見つかり逮捕された。阿部の作業衣からは、「マラチオン」が検出されたが、調べに対し「覚えていない」と繰り返しているという。
阿部は群馬工場で8年3か月働いているが身分は派遣社員。性格は陽気で、新入社員の面倒もよくみていたという。正社員になれなかったことと給料への不満を口にしていた。2年前に遅番、早番手当がなくなってからは、上司に食ってかかることもあったという。
家族は妻と20代の息子の3人暮らし。工場勤務以外に新聞配達やカブトムシの飼育販売もしていた。アニメのコスプレとカスタムスクーターが趣味で、大音量の音楽を流しながら走っていた。コスチュームの背中に「正義」の文字が入った49歳を、周囲は「正義おじさん」と呼んでいた。
母親は「ただもうパニックです。カッとすることもあるが陽気な子で…。私倒れそうなんです」と話す。気の毒に。
工場内に広がっていた給与・待遇への不満
調べは農薬混入の経緯に絞られるが、工場へは作業でしか入れず、作業衣にポケットはない。全身シャワーの消毒後、2階から入って1階のピザ・ラインに降りるのだが、彼はよく2階のフライやコロッケのラインにやってきて、作業員に声をかけたりしていたという。陽気なキャラでだれも違和感がなかったらしい。
工場は正社員64人に対して契約社員が194人。契約社員から正社員になれるのは、「年に3人くらい」(工場幹部)という狭き門だった。これがかなわなかった不満もあったと見られる。
司会の羽鳥慎一「覚えてないといっていますが、犯行は1人なんですかね」
井口成人レポーター「難しいところですね。工場には不満を持ってる人がずいぶんたくさんいましたから」
石原良純(タレント)「正社員への昇格が年に3人じゃ、夢も希望ももてない」
青木理(ジャーナリスト)「使い捨てじゃ従業員は夢を持てませんよ。いま労働者の38%が派遣です。年長フリーターが10年前の2倍になっているんです。中国のギョーザ事件も工場への不満が原因だったですね」
こうしたゆがみはアベノミクスなんかじゃ救えない。