<さよなら、アドルフ>
ドイツ敗北で人生暗転「ヒトラーの子ども」…逃避行で味わう世間の冷酷さと大人たちのウソ

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世の中なんてみんな嘘っぱち!14歳少女の刺すような視線

   困難を極める旅路の途中、ローレは双子の弟のうちひとりを失った。しかし、どうにか汽車に乗り祖母の家に着くめどをつけた。だが、別れは突然だった。身分証を紛失したトーマスは汽車から強制下車させられる。ローレに身分証を盗まれたと思い、ガラス越しにこちらを睨みつけるトーマス。それを能面のような表情でみつめるローレ。静かだが、壮絶という言葉が似合う。

   身分証を盗んだのは弟だった。きょうだいはどうにか祖母の家にたどりつく。そこに流れる日常は、両親がいなくなる以前と何も変わらない。穏やかで豊かで、汚い部分から目をそらしたままの世界だ。トーマスはユダヤ人ではなく、弟が抜き取った身分証に写っていた写真は別人だった。ローレは静かに悟る。ナチの夢見た世の中なんてうそっぱちだ。血など何の意味もありはしない。静かに幕は落ちていく。

   大筋を語ってもエッセンスを語りきれた気がしない。迫力のある主人公ローレの「眼力」を見るだけでも足を運ぶ価値のある映画だ。単なる反戦ものというわけでもなく、トーマスも善人ではない。ローレだって清純なヒロインではなく、勝気で冷たい。でも、だからこそ伝わる。複雑なんて言葉じゃ伝わらないくらい、現実は苦い。

(ばんぶぅ)

おススメ度☆☆☆☆

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