住民不信「中間貯蔵施設の次は最終処分場か?」
さらに、地元住民が最も不安に感じているのが、「本当に中間貯蔵なのか、結局は最終処分場になるのではないか」という強い疑問だ。それには次のような経緯があった。政府が初めて中間貯蔵施設の計画を地元に示したのは、原発事故から5か月後のことだった。菅直人首相が福島県の佐藤雄平知事との会談で「県内に中間貯蔵施設を整備することをお願いせざるを得ない」と、突然切り出したのだ。もともと福島県内に最終処分場の建設を検討していた環境省にも、まったくの寝耳に水だった。
当時、官房副長官で原発担当だった福山哲郎参院議員はこのときの事情について、「福島を放射性廃棄物の最終処分地にするというメッセージを言える状況ではなかった」と話す。浮上したのは、将来県外に持ち出す事を約束する形での中間貯蔵施設だった。といって、最終処分場の当てが県外にあったわけではなかった。その場しのぎだった。
環境省の職員は「将来、放射線量が下がればすべての廃棄物を県外に持ち出す必要はない」と話すが、県外持ち出しを30年以内と期限を長めに定めたのも、線量低下を待つという思惑があったからなのだろう。菅首相が地元に示したお荷物はそのまま安倍政権に引き継がれることになったが、井上副大臣はこう言う。
「たしかに、30年たてば放射線濃度は今の40%ぐらいに落ちるという試算があります。だからといって、それを県外に持ち出さないとはわれわれは考えていません。30年以内に県外と約束しているので、それを実行するということです。すでに閣議決定されているが、より上の法律のレベルに書き込めば、国の義務が生じるので必ず実行するというメッセージになると思います」
NHKのアンケートにこんな書き込みがあった。「住民は中間貯蔵施設という前提でも、受け入れをめぐり複雑な気持でいる。それが最終処分場となるとまったく別の問題になってくる」
おそらく最終処分場問題の決着は先送りされ、30年先になるのだろう。地元は「必ず実行する」というメッセージを信じてそれまで待つしかないのか。
モンブラン
*NHKクローズアップ現代(2014年1月22日放送「故郷はどうなる 除染廃棄物に揺れる福島」)