福島原発事故から間もなく3年になるが、除染で出た放射性物質廃棄物は住宅地のあちこちに今も置かれたままだ。国は先月(2013年12月)、最終処分まで保管する中間貯蔵施設に福島県双葉郡の大熊、双葉、楢葉3町の候補地を挙げ、各自治体に受け入れを要請した。
「家、たんぼ、山、ふるさと、心の中にしまっておくしかないですね」
住民たちは復興のカギを握る施設の必要性を認めながらも割り切れない、切ない。住民の間には「中間イコール最終処分場」という不信がつのる。
「避難指示解除になってもみんな帰ってこない」
国の計画によると、福島県内全域から集めた廃棄物をいったん各地の仮置き場に集めたあと中間貯蔵施設に運ぶ。その後、30年以内に県外の最終処分場に移すとしている。
中間貯蔵施設は福島原発周辺の大熊、双葉、楢葉3町のあわせて19平方キロメートルの土地を国が買い取り、分別施設、廃棄物を焼却して放射線量を減らす減容化施設、貯蔵施設などを建設する。東京ドーム23杯分、2800万立方メートルの廃棄物を運び込み処理・貯蔵する。維持管理を含め総費用は1兆円以上になる。国は来年1月(2015年)には搬入作業を開始したいとしている。
3町の候補地のなかで11平方キロメートルと最広い大熊町小入野地区の住民に、NHKが賛否を聞くアンケートを行なった。43世帯のうち33世帯が回答し、8割に当たる28世帯が「受け入れ賛成」と答えた。理由は「先祖から受け継いだ土地を手放すのは辛いが、放射線量が高く住めないところを有効に使う事は必要だと思う」「除染で出た廃棄物をどこかで受け入れなくては復興が進まない」というものだった。多くは復興を進めるための苦渋の決断だった。
しかし、町の大部分が早期帰還に向けた避難指示解除準備区域に指定されている楢葉町では厳しい反応が出ている。楢葉町は今年3月(2014年)にすべての除染が完了する予定で、町で事業を再開した住民の中には「戻ろうと思っていた住民が、中間貯蔵施設の浮上で止めようかなという人が出ている」「楢葉町は『住める場所』になったわけで、そこに中間貯蔵施設を作ること自体がおかしい。逆に復興を妨げるではないか」と国への不信をつのらせる。
内多勝康キャスターが「避難指示解除準備区域の楢葉町にどうして施設の計画が持ち上がったのか」と環境省の井上信治副大臣に聞く。「大量の除染土壌が発生している地域は、運搬などが遠距離になってしまい問題があります。他に地盤が安定しているとか、必要な面積を確保するとか、客観的条件を技術者に検討していただいて決定していったという経緯があります」
これで地元住民が納得できるのかどうか。